超高齢化社会で必要とされる「親族後見人」行政が支援へ

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世界一の超高齢化社会である日本では、認知症患者や病気・ケガなどで寝たきりの高齢者も増えています。
成年後見制度は任命された後見人が、判断力が低下した人の財産や生活を守る仕組みです。
低下し続ける「親族後見人」の専任数や、伸び悩む制度利用の促進のため、厚生労働省が主体となった取り組みも始まっています。

成年後見制度は超高齢化社会を迎えた日本に必須の制度

日本では1970年に65歳以上の人口が7%を超えて以来、世界でも類を見ない速さで高齢化が進んでいます。2018年3月の確定値(総務省統計局)では、65歳以上の人口は28.3%に達し、世界一の超高齢化社会となっています。超高齢化社会は今後もさらに進むと推測され、日本では認知症や寝たきりなどの高齢者の増加も、予想に難しくありません。65歳以上の認知症患者の数は2012年時点で462万人ですが、2025年には700万人に達し、高齢者の5人に1人が認知症患者になるという推計(厚生労働省)も出ています。家族の誰かが認知症になった時ではなく、自分自身も認知症を発症する可能性があることも、これからの人生設計の中で考慮する時代が来ているとも言えるでしょう。

高齢化で認知症や寝たきりの人が増えることで、浮上してきた問題が「判断能力の低下」です。自分にとってためになるかどうか、自分の好きなことかどうかは、通常なら自分で判断できることが、認知症や病気などでできなくなってしまいます。判断能力が低下することによって、本人の意思とは無関係に貯金や年金を第三者や親族に使われてしまったり、無用なものを買わされてしまったりと、その人の生活に関わるトラブルに巻き込まれる危険性が高まります。実際に被害は増えているのが現状で、こうした危険性を減らす効果を期待されているのが「成年後見制度」です。

成年後見制度は認知症などで、判断能力の低下した人に後見人をつける仕組みで、家庭裁判所が監督する制度です。家庭裁判所が任命した後見人(支援者)が、本人に代わって財産の管理や契約の締結を行い、本人の不利益にならないようにサポートする役割を担います。

成年後見制度には3つの理念が掲げられています。「自己決定の尊重」「身上の保護の重視」「ノーマライゼーション」と、本人のための制度であり、利用も個人単位で行われます。成年後見には2つの種類があり、認知症が発症して判断能力が低下してから利用する「法定後見」だけではなく、万が一の時のために、あらかじめ自分で後見人を決めておく「任意後見」もあるのが特徴です。

法定後見制度が家族の生活を守る

親族後見人
判断能力が低下し始めた人が利用する「法定後見」は、判断能力のレベルによって支援の種類が「成年後見」「補佐」「補助」の3つに分かれています。判断能力の低下した本人に代わって、近しい親族などが家庭裁判所に申し立てを行って手続きを行います。申し立てを行うと、家庭裁判所が「審判」を行い、後見人を決定する仕組みです。後見人を誰にするかは家庭裁判所が決定しますが、申し立ての際に候補者の希望は伝えられます。

法定後見人(成年後見人・保佐人・補助人)に任命されると、「代理権」「取消権」「同意権」の3つの権利が与えられます。本人の代わりになる「代理権」は、後見活動で最も中心となる権利です。本人確認が厳しい銀行でも預金の引き出しや口座解約などの手続きができたり、賃貸契約やホームヘルパーの契約などを、本人に代わって後見人が行える権利です。

「取消権」は判断能力の低下した本人が、誤ってしてしまった契約などを取り消せる権利です。本人に代わって後見人が契約の内容をチェックし、本人の不利益にならないように判断します。本人と後見人との二人三脚とも言えるのが「同意権」で、判断能力が低下した本人が行った契約などに後見人(保佐人・補助人)が同意することにより、それが有効になるというものです。同意がなく、本人が単独に行った契約は取り消すことができます。

法定後見の3つのレベルは、家庭裁判所が医師の診断書をもとに判断します。本人の意思を尊重するため、「成年後見」「補佐」「補助」のレベルに応じて、必要最低限の権限しか与えられません。あくまでも重要なのは利用者本人の意思に反していないかどうかです。財産管理や生活の組み立てまで行う後見人は、常に本人の意向に沿っているかどうかを念頭に、後見活動を行います。

任意後見制度で自分の将来を決める

親族後見人
将来、何らかの理由で判断能力が低下した場合に備えて、あらかじめ自分で後見人を選んで、自分の意思を伝えることを決めておくのが「任意後見」です。「法定後見」と違い、後見人は本人が「契約」の形で後見する人にお願いする仕組みになります。同時に家庭裁判所は後見人がきちんと任務を行っているかチェックするために、「任意後見人監督人」を任命します。いわば保険のような制度と言えるでしょう。

「法定後見」との大きな違いは、「任意後見」の場合、本人が認知症や身体の不自由な状況にならない限り、後見活動を行うことがない点です。後見活動を行う状態になっても、認められるのは「代理権」のみで、「取消権」「同意権」は付与されません。

「任意後見」には契約の内容によって、「将来型」「移行型」「速効型」の3つのタイプがあります。認知症などで判断能力の低下した時に備えるのが「将来型」で、契約後すぐには後見活動を行わず、本人の判断能力が不十分になった時に後見人がつきます。「移行型」は、当初は委任契約に基づく生活支援や療養看護、財産管理などの支援を受けつつ、本人の判断能力が低下した時に後見活動を行ってもらう契約です。さらに、契約と同時に「任意後見人監督人」を選任し、後見人に後見活動を開始してもらうのが「速効型」です。最もポピュラーなのは「移行型」で、自分の老後に備えるといった点でも、最も安心できる内容の「任意後見」です。

「任意後見」で与えられるのは「代理権」だけですが、その内容はあらかじめ本人が決めておくことができます。やって欲しいことだけを伝えるのではなく、考えられる全ての項目について、やって欲しくないことについても、きちんと明記しておくことが重要です。万が一、認知症が進み「取消権」「同意権」が必要になった場合でも、法定後見開始の手続きを行い、家庭裁判所から権限を与えてもらうことができます。

実は少ない親族による後見人

「法定後見」の場合、成年後見人に任命された人の内、全体の26.2%は本人の親族ですが、それ以外の73.8%は親族以外の第三者が任命されています(最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況 平成29年1〜12月」)。成年後見制度が始まった当初の2000年には、親族の割合が9割以上とほとんどを占めていましたが、その後は減少の一途を辿っています。一方で弁護士や司法書士、社会福祉士といった専門職による後見人は増加しています。

親族による後見人が減少し第三者が増加している背景には、家庭裁判所が親族の後見人に対し、あまり積極的に選任していないという事情があります。単身者や既に身寄りのない高齢者が増え、該当する親族が見当たらないケースや、親族の後見人による財産侵害などの不正行為が非常に多いことが原因です。このため、親族を後見人に希望し申し立てを行っても、家庭裁判所の判断によっては必ずしも実現するとは限りません。

こうした事情により弁護士や司法書士、社会福祉士といった第三者による後見人の需要は高いのですが、親族間のトラブルに巻き込まれるなど本来の業務以外に取られる時間も少なくなく、なり手が少ないことが問題として浮上しています。そこで、弁護士などの専門職に変わって後見人として期待されているのが「市民後見人」です。本人により身近な立場でサポートできるよう、自治体による研修や実習を受けた市民個人が引き受けるもので、地域福祉の一環として注目されています。

2018年4月には、厚生労働省内に「成年後見制度利用促進室」が設置され、2016年から内閣府が行っていた利用促進業務を引き継ぐことになりました。利用者がメリットを感じられるように制度を改善したり、後見人を支援できる体制をつくったり、不正行為の防止を強化したりと、さらなる制度の利用促進を進めています。後見人を任命することで、財産侵害などの不正を防止するとともに、親族による後見人の任命を支援し、後見人不足を補うというのも狙いのひとつです。

その人らしい何気ない日常を重ねる手助けをするのが成年後見人

活動するに当たって、後見人に求められる最も大切なことは、本人の気持ちや人生に対する価値観を優先することです。成年後見制度の理念にも掲げられる通り、後見人自身の価値観は挟む必要はありません。「任意後見」ならば元気な内から、本人からしっかりと細かな希望も聞き取っておきます。「法定後見」でも本人や家族と相談し、できる限り本人が望む生活のあり方を実現する努力をします。

とは言え、後見人は本人の判断能力が低下しているために任命されていることを考えると、そのまま全てを希望通りに叶えることが、本人にとって幸せとは限りません。適切な軌道修正を加えてあげることも、後見人に要求される役目です。後見制度では、本人の意思を尊重しながら、適切に軌道修正を加えて保護するバランス感覚が要求されます。

誰の目から見ても妥当性があり、客観的な理由がある判断が、後見人に求められる資質となります。金銭の出納は細部まで記録を残したり、必要ならば専門家に相談したりと、本人やその周囲の人々からも、信頼される後見人になることが大切です。超高齢化社会を迎えた日本にとって、人々が豊かな老後を送る上でも、成年後見制度が重要な仕組みであることは間違いありません。任命された後見人だけではなく、周囲の人も成年後見制度をきちんと理解し、お互いに手助けできる体制を整えていくことも、今後の重要な課題のひとつに挙げられます。

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