【前編】持続可能で豊かな社会の創造に向けた活動「脱炭素化」とは? 『自然エネルギーを基盤とした社会構築の必要性〜公益財団法人自然エネルギー財団』

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太陽光をはじめとする自然エネルギーは、日本おいてはなかなか普及が進みませんが、欧米でもアジアでも、しっかりとそちらに舵は切られているようです。
パリ協定から離脱するとトランプ大統領が発言するアメリカですら、実際のところ、石炭火力や原子力発電に戻る動きにはなっておらず、風力発電と太陽光発電が大きくシェア拡大していると言われています。
そうした世界の潮流や実情を公益財団法人自然エネルギー財団 事業局長の大林ミカ氏(写真右)、気候変動グループマネージャーの西田裕子氏(写真左)に伺います。

安定した自然エネルギーを日本で育むべく、政策提言に注力

Q:財団の成り立ちや設立の背景を教えてください。

大林:2011年の東日本大震災を機に、財団の設立者・会長である、ソフトバンクCEOの孫正義会長が「日本で新しいエネルギー政策をつくっていきたい」という思いを強くしたことで、政策にフォーカスしたシンクタンクが構想されました。
震災から1ヵ月後の同年4月には構想を公表し、8月には財団を設立しています。孫会長自身は情報革命で人々を幸せにすることを信条としてきましたが、それは電力なしには成り立たないということを震災で改めて実感し、また、電気がなく携帯電話がつながらない状況で、多くの方がお亡くなりになったことを十字架として背負い、より安定した自然エネルギーを日本や世界で育てたい思いを強くしています。

財団のコンセプトは3つあり、まず、自然エネルギー政策についての調査研究を行うこと、次に、調査研究結果をもとに、自然エネルギーが政策フレームワークの中で育っていくよう政策提言をしていくこと、そして、海外の進んだエネルギー政策の知見を「人々」に対して広めていくということです。
当初は日本の政策研究を対象にしていましたが、今では世界へと視野を広げて、2016年には英語名から「Japan」を取って「Renewable Energy Institute」として、アジアの国々のエネルギー政策についても提言を行っています。

Q:シンクタンクというと、日本では銀行系や産業系のイメージです。

大林:そうですね。コンサルティングを行うシンクタンクが一般的です。クライアントのために研究しビジネス提案をする、あるいは、産業界のシンクタンクは、産業界の利益のために提言する印象があります。
海外では、政策作りをサポートする非営利のシンクタンクが活動していますが、日本ではそうしたものが育ちにくい土壌にあります。私たちは産業界や政府から独立した立場から、真に自然エネルギーが広がっていくためには、どういった政策が必要なのかを考えています。自然エネルギーの事業者とも良好な関係を築いていますが、事業者の意見とは違っても、短期的な利益を追うのではない、公正な市場を創るための提言を行います。

温室効果ガスをゼロやマイナスにでき、尽きることがないのが自然エネルギー

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Q:自然エネルギーには太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなどがありますが、これらを社会に推し進めていくべき理由は何でしょうか。

大林:利点はたくさんあります。ひとつには、再生可能と言っているように、どれも尽きることがないという点です。地熱や潮力以外は全て太陽のエネルギーに基づいています。太陽光の熱利用の源は直接的に太陽ですが、実は風も水も太陽のエネルギーから循環しているものですし、バイオエネルギーも植物や、それを食べた動物の糞尿を使うにせよ、植物が光合成で蓄えた力をエネルギーに転換していくものです。そのほかに地熱はマグマ、潮力エネルギーも引力を源にしていますが、いずれも尽きることがないエネルギーです。

二酸化炭素の排出についても、バイオマスは燃焼時には溜めていた二酸化炭素を排出しますが、もともと大気中から吸収した二酸化炭素を排出するので、CO2ニュートラルと言われます。その考えに倣えば、太陽光や風力は発電すればするほど収支としてはCO2マイナスになります。放射性廃棄物も排出しません。そういったエネルギーは自然エネルギーしかないのです。

もうひとつには、自然エネルギーは利用形態そのものが地域分散型、つまり、石油やウラン、化石燃料と違って資源の地域遍在がありません。
原子力発電の運営に市民が関わるのは難しくても、太陽光や風力なら市民が投資して運営に直接関わることも可能です。より分散的で民主的に成り立つ社会につながります。
私は、エネルギーが社会の形をつくると思っています。化石燃料や原子力に依拠した社会というのは中央集権的ですし、一部の人が利益を得る形にもなりやすいのです。そうではなく、自然エネルギーを使うことで、より多くの人々がその運営や意思決定にも関わることができるような社会になっていくでしょう。
歴史が示す通り、エネルギーは紛争の種になり得ますが、自然エネルギーの世界でよく言われるように「太陽を巡る争いはない」と、太陽はまさに皆に均等に降り注ぐものです。
例えば東京も、都会でありながら天気の良い日が多く、ヨーロッパから来た人がびっくりするくらいです。ビルの屋上にどんどん太陽光発電の装置をつけるなどして、推進していけると良いのではないでしょうか。

気候変動対策を真剣に考える日本企業を取りまとめ、束ねる活動も

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Q:どのような活動をされているのですか。

大林:まず、定期的にメディア会見を行い、世界や日本の自然エネルギー状況について何が起こっているのかを伝えています。
すぐには記事にならなくても、繰り返し伝えていくことが重要です。もちろん日本にもこの分野の専門家が数多くいらっしゃいますが、なかなか最新情報はアップデートされていきません。また、英語をはじめ各国の言語から日本語に翻訳するステップを要するために、日本ではメディアが世界のリアルな動きを掴むのが難しいし、受取る側も一次情報にあたることなく二次情報を受取ります。世界で何が起きているか最新の情報を伝えることが私たちの役目です。

そのために、定期的に大規模な国際会議を主催し、海外から有識者をお招きしています。例えば2018年10月には「脱炭素化に向かう建築・住宅〜エネルギー効率化と自然エネルギーのシナジー」と題するグリーン・ビルディングシンポジウムを、「新しい火の創造」などの著書をはじめとして、世界をリードするエネルギーの専門家エイモリー・B・ロビンス氏を招いて行ったほか、「系統運用と自然エネルギーの大量導入〜100%自然エネルギーを目指すデンマークの知見を学ぶ」という国際シンポジウムを、デンマークの国営風力事業者エナギネット社と洋上風力発電で世界から注目されているオーステッド社を招聘して行いました。

西田:もうひとつ、同じ10月に開催したのが「気候変動アクション日本サミット」です。これは、それに先立ち2018年7月に、企業や自治体、NGOなど約100団体による脱炭素化の実現を目指すネットワーク組織として設立された「気候変動イニシアティブ(JCI)」によるイベントで、海外からお二人の方の基調講演、日本からはトップリーダーとしてソニーの平井一夫会長や小池百合子東京都知事にもセッションにご参加いただきました。JCIはその後も会員企業を増やして300社ほどになっており、レオパレス21にも参加していただいています。

そして、こうして海外からいらっしゃる方には、会議への参加だけでなく、国会でのレクチャーや省庁関係者、産業界、メディアとの面談、インタビューの場も設定します。彼らの持つ知識と情報を色々なところで伝えていく、また、日本の状況を知って持ち帰っていただくためでもあります。

Q:このようなイベントは、各部門のマネージャーが企画されるのですか。

西田:そうですね。私自身は都庁での街づくり、再開発事業や環境系の仕事に携わってきて、当財団に加わったのは2017年5月からです。
都庁の環境セクションというのは歴史的には公害対策などにおいて国の政策も先導するような形で先進的に取り組んできた組織です。90年代末からは気候変動やヒートアイランド対策にシフトして、私は中でも建築物や街づくりからのアプローチを担当してきました。当財団では、専門分野が縦割りになることなく、自然エネルギーや省エネ全般など総合的にアプローチしていく姿勢で、非常にやりがいがあります。ダイレクトかつ互角に語り合える専門家集団であり、これからもそうした専門家がますます増えてもらいたいですね。

大林:若い研修者が目指すような場所にしたいです。例としては、ドイツのシンクタンク「アゴラ・エネルギーヴェンデ(Agora Energiewende)」ですね。2011年の福島の原子力発電所事故以降、ドイツは原子力を止めることになりましたが、やはりそれを機にできた団体で、常に就職先人気ランキングのトップにいるのです。ドイツの研究者にとってはたいへん魅力なのですね。

こうしたエネルギー政策の提言を行うような団体は、NGOであっても世界ではとても力があります。アジアでも中国やインド、インドネシア、韓国では寄付も集まって資金が潤沢ですし、人材も集まっている状況があります。日本ではまだまだですが、少しずつ前進させていきたいですね。

(プロフィール)

公益財団法人自然エネルギー財団
事業局長
大林 ミカ

2011年8月、公益財団法人自然エネルギー財団の設立に参加。財団設立前は、アラブ首長国連邦の首都アブダビに本部を置く国際再生可能エネルギー機関(IRENA)で、アジア太平洋地域の政策・プロジェクトマネージャーを務めていた。1992年から1999年末まで原子力資料情報室でエネルギーやアジアの原子力を担当。2000年、環境エネルギー政策研究所の設立に参加し、2008年まで副所長。2008年から2009年まで駐日英国大使館にて気候変動政策アドバイザーを務めた。2017年、国際太陽エネルギー学会(ISES)よりグローバル・リーダーシップ賞を受賞。

公益財団法人自然エネルギー財団
気候変動グループ
マネージャー
西田 裕子
2017年5月より現職。専門は都市再開発や調査研究、都市のサスティナブルデベロップメント(環境建築/都市づくり)関連の政策。2017年3月まで、東京都において気候変動、ヒートアイランド対策の政策立案及び国際環境協力を担当。C40(世界大都市気候先導グループ)と連携して、都市の建築の省エネルギー施策集「Urban Efficiency」を取りまとめるなど、世界の都市をサポートする活動をしてきた。早稲田大学政治経済学部卒、ハーバード大学ケネディ行政大学院卒、行政学修士。
自然エネルギー財団では、インフォパック「石炭火力発電から撤退する世界の動きと日本」(2018年)、提言「脱炭素社会を実現するエネルギー政策への転換を:『エネルギー基本計画』と『長期低排出発展戦略』の議論を誤らないために」(2018年)などの執筆を担当。また、建築部門や自治体における気候変動対策を支援する。

自然エネルギー財団
https://www.renewable-ei.org/
気候変動イニシアティブ
https://japanclimate.org/

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