介護離職が企業の経営リスクに! 防止に向けた取り組み

ケア

関連キーワード
介護離職
公的な介護保険制度が設けられているにもかかわらず、なぜ介護離職が社会問題にまで発展しているのか。その実態を解説するとともに、介護離職の防止に熱心な企業の取り組みを紹介します。日本経済の成長を妨げる介護離職の現状と課題をまとめました。

介護支援の制度について

介護保険制度は、介護を社会全体の問題と捉え、「共に支え合う社会」をスローガンに2000年に施行されました。これにより介護は行政主導の高齢者福祉から分かれ、事業者との直接契約のもとに希望するサービスを自由に利用できる「介護サービス」となることで、誰もが利用しやすいシステムに変更されました。

介護支援と実際の問題点

介護保険制度は、国が財源を負担する社会保障制度のひとつです。介護保険制度の創設時には200万人台だった要介護者が、2016年には600万人を突破しました。今後も要介護者が増加することが見込まれ、介護保険は抑制される傾向にあります。2005年の介護保険制度の見直しでは、要支援が介護保険の給付から切り離され、新たに創設した「介護予防」に移行したことにより、サービスの利用が制限されたほか、特別養護老人ホームなどの長期入所の対象から外れました。

2015年4月の介護保険制度の見直しでは、特別養護老人ホームの長期入所要件が変更され、介護度の要介護1・2が利用対象から原則除外になりました。また、同年8月には、現役世帯並みに所得がある方がサービスを利用する場合、自己負担が原則1割から2割に変更、2018年8月には3割負担も導入されています。

介護保険は「共に助け合う」という前提で開始されたものの、要介護者増加による財源不足のため、何度もテコ入れが図られ、その都度「介護離職ゼロ」と逆行した政策が行われています。認知症などで一番介護を要するのは寝たきりとなる「重度」ではなく、認知・記憶障害を発症しながら動き回ることができる「中等度」です。例え通所介護や訪問看護などのサービスを利用したとしても夜間を含む一日中の介護が必要となるため、通常の勤務と並行して介護を行うのは難しいことです。

法律によって介護休業・休暇が定められていますが、介護休業は「対象家族1人につき通算93日まで」「対象家族1人につき3回」、介護休暇は「1年 に5日まで」「1日または半日単位で取得可能」などの条件が設けられています。介護には24時間365日の体制が必要であり、介護休業・休暇で定められた期間で完結できるものではありません。そのような理由により、やむを得ず退職して介護に専念する人が増加しています。

離職による企業側のデメリット

介護離職
介護離職する人の年齢は40〜50代が多いのが特徴です。この世代は、会社の屋台骨を支えるとともに、これまで培ってきた技術やノウハウを次の世代に伝える大切な役割を担っています。今後、日本では労働者人口の減少による生産力低下が懸念されており、優秀な人材の流出は企業にとって致命的とも言えるでしょう。

離職を防ぐための企業の取り組み

介護離職者が年間10万人、予備軍は100万人と見込まれる中、多様な働き方を念頭に置いた支援制度を始めた企業があります。

国の制度を超える手厚い支援

介護休業中は原則無給のため、家計に大きな打撃を与えることも休業しづらい要因となっています。ある大手家電メーカーでは、同社の規定で通算1年と定めている介護休業の期間の内、6ヵ月は基準内賃金の7割、それ以降は4割を支給するとした制度を設け、休業取得を推進しています。また、ある大手機械製作会社も、介護休業期間1年の内、9ヵ月は給与の5割を支給するなど、国の制度よりも手厚い支援で離職の防止に努めています。

遠距離介護に対応した親孝行支援制度

ある大手住宅メーカーでは、期限の上限がない介護休業制度による支援の充実化に合わせ、同社独自に立ち上げた、「親孝行支援制度」を導入しました。これは、転勤などの理由で施設に入所している親と離れた場所で働く社員のために、帰省の旅費について年4回を上限とし、距離に応じて補助金を支給するものです。この制度の利用により、遠方に介護が必要な親を持つ社員の経済的負担の軽減につながります。

介護事業参入により介護離職を防止

宮城県仙台市では、飲食店チェーンの運営会社を傘下に持つ企業が介護事業に参入しました。介護事業に参入した狙いのひとつには、従業員の離職防止があるとしています。従業員との面談で介護についての相談が目立つようになり、従業員が離職した場合、昨今の人手不足では補充が難しいと判断したため、自前での介護施設の運営を決めたとのことです。

2015年の民間調査機関の調査によると、介護をしている会社員の88.5%が、「介護休業制度を使用していない」と回答しています。理由としては「今後、現在より休業が必要な状況が来るかもしれない(33.3%)」が最多で、以下「忙しくて休めない(26.7%)」「特に理由はない(25.0%)」「今後のキャリアに影響がある(10.0%)」「会社に申し訳がない(8.8%)」「タイミングが分からない(8.8%)」と続きます。

「休暇を取る」=「仕事の穴をあける」というイメージが強く、本人が休暇を取得することには後ろめたさが伴います。こうした感情は雇用側にもあり、手厚い支援をうたいながらも、「嫌味を言う」、「主要ポストから外す」、「退職を迫る」など、休業や休暇を取得することで不利な条件を打ち出すケースも見られます。

こうした事態を解決すべく厚生労働省は、パワーハラスメントの防止策づくりを企業に義務づける法律の整備を検討しています。被害者の事後的な救済だけでなく、被害を予防する必要性が高まっているとして、防止策を企業に徹底させたい考えです。

離職を防ぐには周囲の理解も必要

介護離職
ひと昔前までは「介護は長男の嫁が行うもの」などと誰かひとりに責任を押しつける風潮がありました。逆に責任感が強く、自分ひとりで介護しようとする人もいますが、ひとりだけで認知症の高齢者の世話を続けると、「こんなにも一生懸命に介護しているのに、全く報われない」という気持ちが強くなって、燃え尽きてしまったり、虐待に走ってしまったりすることも考えられます。そうした状況を避けるためには、家族が協力しながら介護する姿勢が大切です。

近年では地域住民が、その地域で暮らす高齢者を支える「地域包括ケアシステム」が構築され、介護や医療・住まいや生活支援といった、高齢者を支えるサービスが一体的に提供されています。具体的には、介護サービスだけでなく医療ケアサービスなども加え、自治体やボランティアなど多くの人たちが高齢者と関わり、住み慣れた地域で自分らしい生活を人生の最後まで持続できるように支援するシステムです。そうしたマンパワーを活用することは、家族に掛かる負担が軽減され、介護離職の抑制にもつながることでしょう。

自分の働き方を見直す機会(介護できる働き方を知っておく)

介護や看護を理由に退職した人が、2017年9月までの1年間に9万9千人いたことが、総務省の発表で明らかになりました。介護をしながら働く人は346万人で、5年前から55万人の増加です。また、1度離職してから再び働くようになった人は、25%に当たる2万5千人でした。

家族介護への理解、国の政策や企業の支援の充実とともに、「介護休業や介護休暇は社会問題を解決する手段のひとつ」として認識され始めています。介護離職には経済的・精神的に大きな負担が伴います。業務内容や労働時間などの見直しを図った上で、介護離職は「最後の手段」として選択されるべきものと言えるでしょう。

その他のおすすめ記事

その他のケアの記事

キーワード一覧

 ページトップ