【前編】建築系学生が空き家の改修で地域活性に挑む『空き家を、地域の特性を活かして再生〜芝浦工業大学の学生プロジェクト「空き家改修プロジェクト」〜』

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空き家改修プロジェクト
空き家問題が年々深刻さを増しており、メディアでもよく取り上げられています。
都市部では主に防犯や環境面からの取り組みが行われていますが、地方においては問題解決に当たる担い手自体が少ないという現実もあります。
そんな中、芝浦工業大学の建築系学生が中心となって地域活性化のために行っているという「空き家改修プロジェクト」について、その取り組みの背景や活動の様子をプロジェクト第5期代表の鈴木康右さんに伺います。

学生の自主運営で、空き家を再生し、地域を活性化させる

空き家改修プロジェクト
Q:「空き家改修プロジェクト」とは、どのようなものなのでしょうか。

A: 2014年に芝浦工業大学の建築系学生が静岡県の東伊豆町稲取地区で、ある空き家物件について相談を受けたのをきっかけに、建物の改修を中心とする地域づくりを行ったのが始まりです。サークル活動のような形で、学生の自主運営として続いており、活動地域も増えて、2018年度は伊豆稲取のほか、私も参加する神奈川県開成町、そして新潟県の佐渡島の3地域でプロジェクトが実施されました。

2016年からは芝浦工業大学の「学生プロジェクト」社会貢献部門に採択され、年間50万円を上限とする活動資金の援助を受けています。基本的には案件ごとに、東伊豆町であれば町役場、開成町なら企業、佐渡島は個人など、施主はそれぞれ異なっています。学生が行う設計・施工については無償で、交通費や材料及びその他の費用などは施主よりご提供いただくような形です。

Q:なぜ空き家というものに着目するようになったのですか。

A:地域を活性化したい思いの表れです。大学では授業で地域活性化のための設計などもあります。また、空き家や少子高齢化といった社会問題についても、授業の中で考えます。その際、学生である自分たちも何かイベントなどを企画して地域を盛り上げたいと考えるようになり、建築系の学生だからこそできることとして、空き家の改修から手掛けるようになりました。

ただ、まだ学生なので建物の構造体を扱う資格などは持っていませんし、万一のことがあれば危険なので、その部分に変更を加えることはしません。間取りの変更や多少壁を壊したりする程度で、基本は内装の改修です。構造体は基本残したままで、機能しなくなってしまっている建物を再生させるといった感じですね。

工事中や竣工後にもイベントを開催して、物件に馴染み、再発見してもらう

空き家改修プロジェクト
Q:実際のプロジェクトの進め方について教えてください。

A:プロジェクトの第5期には約70人の学生が所属しており、その内の約9割は芝浦工業大学の学生ですが、ほかに首都大学東京などからも参加しています。
活動は、地域ごとに設計室というチームに分かれて行い、月1回は定例会を開いて各設計室の進捗報告をしています。それにより、他の地域の取り組みや方法を参考にすることもできる、という仕組みです。

空き家を改修するに当たっては、まず地域の調査から始めます。あらかじめ施主から建物の用途について依頼があればそれに沿うようにしますが、基本的にはその地域に何が足りていないのか、何が新たに必要とされているかを、人口統計を調べたり、フィールドワークとして現地を歩いて調査します。それを受け、実際の空き家物件を見て設計を行い、施工を進めていきます。そして、工事中やその前後にはイベントを開いて地域の子どもたちや大人の方をお招きし、物件自体の存在を改めて知ってもらい、その価値を再発見していただいています。工期は案件によります。開成町では1年強でしたし、伊豆稲取は当初から3ヵ年の計画で1年目は1階、2年目には2階と進めていきました。学生のみでの施工で業者より時間がかかってしまうことで、結果として町からは空き家が徐々に生まれ変わっていくところを見てもらえます。

Q:調査の段階で、地域の方との交流が始まるのですね。

A:これは大事なことで、建物を改修しても、使ってもらえなければ意味がありません。
この調査では、例えば地域の子どもたちに協力してもらい、地図に普段行くところを付箋でプロットしてもらうなどして、皆の動線を明らかにします。子どもたちがよく通る道や集まる場所を知ることで、こういう施設があると良いといった発見につながるわけです。子どもたちに限らず、過去には神奈川県相模原市の空き家を、障がいのある方の施設や高齢者のデイサービス施設へと改修したこともあります。

時間を掛けて改修することが、地元の人との交流につながる

Q:そうやって把握した地域の特性を、どのように物件に活かすのでしょうか。

A: 伊豆稲取で消防団の器具置き場だった建物をシェアキッチンにした際には、子どもから高齢者の方まで様々な住人の方がどんな用途にも使いやすいよう、テーブルや椅子を固定せず自由度に配慮しました。また、椅子を段々に並べ替えて壁にプロジェクターで映し出せば、即席でちょっとした映画上映もできるように工夫しています。その地域に足りていない機能を複合的に考えて、喜んで使ってもらえそうなものを考えていくのです。

伊豆稲取の別の物件では、当初はシェアオフィスにすることを検討しましたが、実際に使ってもらうことを重視して、ものづくり工房とすることにしました。建築家による講演やものづくりのワークショップなどのイベントも開催し、それらを通じて子どもたちに手を動かしてものをつくる面白さを知ってもらえればと思っています。工房にはレーザーカッターなどの機器もあり、クリスマスのオーナメントづくりを行った時は、パソコン上に描いた模様の通りに木材が切り取られていく様子を楽しんでもらうことができました。こういう場があることで、工作などに日頃から興味を持ってもらえれば嬉しいですね。

Q:地域で活動していると、住民の方たちとの距離は縮まっていくものですか。

A:そうですね。私たち学生がこうした改修を手掛ける意味として重視しているのが、地域との交流です。どの物件においても、専門の大工さんなど職人の方が行えば3日間で終わるようなことでも、私たちだと2〜3週間くらい時間をかけて作業をすることになります。それにより、その地域にいる時間を長く持てるのです。3日間だと、建物は生まれ変わっても地域との関係は生まれませんが、私たち学生は長くその場にいて関係を築けます。

地方というのは、改めて感じるのですが、20歳前後の若者が本当にいないのです。それもあって、お年寄りの方などが私たちをご自分の子どもか孫のように大事にしてくださり、例えば、ご自身が大工だった方などが作業の音を聞きつけて中に入ってきて、道具の使い方などを教えてもらったこともあります。実際、学生だけでできることは限られます。地域の方に補ってもらうこともまた、このプロジェクトの良いところなのです。

また、私たちは建物が使えればそこに寝泊りもしますが、地域の方が貸し別荘などの空いている部屋を提供してくれたり、時間を区切って温泉を使わせてくれたりということもあります。こうした申し出は信頼関係によるもので大変ありがたいですし、そういうことでまた距離感が一気に縮まりもするのです。

(プロフィール)

芝浦工業大学の学生プロジェクト「空き家改修プロジェクト」
第5期代表/開成町設計室室長
鈴木 康右
高校時代に留学したドイツで、古い建物が住居として用いられている環境に間近に触れ、建築を志す。2014年、芝浦工業大学工学部建築工学科入学。2016年、学部3年次より「空き家改修プロジェクト」に所属。2018年、芝浦工業大学大学院理工学研究科建設工学専攻入学。「空き家改修プロジェクト」第5期代表を務める。

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株式会社レオパレス21『東京都空き家コーディネーター』に選定
https://www.leopalace21.co.jp/news/2018/0618_2529.html

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