【後編】SDGs目標11達成に通じるユニセフの「子どもにやさしいまちづくり事業」とは『日本型モデル検証とSDGsとの関わり 〜公益財団法人日本ユニセフ協会〜』

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子どもにやさしいまちづくり事業
世界を変えるための17の目標といわれる「SDGs(Sustainable Development Goals):持続可能な開発目標」。世界の子どもたちの権利の実現と健やかな成長の促進を目指すユニセフの活動とも重なるところが大いにあります。
前編では、公益財団法人日本ユニセフ協会が力を入れている「子どもにやさしいまちづくり事業」が世界中で始まった経緯やその現状をお聞きしました。後編では引き続き、同協会広報・アドボカシー推進室シニアマネジャーの三上健氏に、日本での取り組みをお聞きします。

子ども自身に考える余地を与え、サポートする育て方へ

子どもにやさしいまちづくり事業
Q:世界の40ヵ国程で取り組まれているユニセフの「子どもにやさしいまちづくり事業」ですが、日本で取り組まれるようになった背景・状況などを教えてください。

A:日本では、少子高齢化と人口減少が急速に進み、また、「子どもの貧困」、「格差拡大」、「虐待」など子どもに関連する問題が深刻化し、地方自治体が、「子ども」や「子育て」に関わる施策を重視せざるを得ない状況が広がっておりますが、私どもがこの取り組みを知るようになったのは、2009年4月に千葉市で開催された「こどもにやさしい都市(まち)第1回アジア・パシフィック国際会議」がきっかけです。この会議で発表されたオーストラリア人の大学教授の報告は、とても考えさせる内容を含んでいました。それは、「オーストラリアの子どもたちは自分の部屋を持ち、クーラーも付いており、物質的にすごく恵まれた生活をしています。しかし、子どもたちは友だちと外で遊んだり、教会の行事に出席したり、まちのイベントに参加することはなく、部屋に閉じもって遊び、社会との接点を持たずに成長している状況です。このまま大人になってしまうのは、とても心配です。それで、この取り組みを始めました」と話されたのでした。日本の子どもたちもオーストラリアの子どもたちと同様な状況だと思います。人間の基礎が形成される子ども時代に、他の人や自分の暮らす社会と接点を持たないのは心配なことです。何とかしなくてはと思ったことも背景にあると思います。

Q:日本における進め方、考え方で何か違いはありますか。

A:千葉市が行った調査の、「地域の環境や活動等について意見を発言してみたいと思うか」という問いに対して、約7割の子どもたちが「思わない」と回答し、その理由を「意見を言っても変わらない」「聞いてもらえない」「やり方が分からない」といったものがあります。また、国立青少年教育振興機構刊行(2015年8月28日)の 「高校生の生活と意識に関する調査報告書−日本・米国・中国・韓国の比較−」によると、米国の高校生の8割以上が「自分の希望はいつか叶うと思う」と答えたのに対し、日本の高校生は4ヵ国中最も少ない7割未満がそう答えていました。この点には注意を払う必要があると思います。つまり、意見を言う場とそれを受け止める社会システムがあれば、子どもたちの社会参画が促進され、子どもたちの心持ちも変わる可能性が大いにあるということです。
子どもの育ち方を、指示的で過干渉な強制型ではなく、考える余地を与えてサポートする共有型にしていくことが、日本社会に必要になっていると思います。

状況の異なる5つの自治体で、日本型モデルの検証を開始

子どもにやさしいまちづくり事業
Q:それで始めたのが、ユニセフ「日本型子どもにやさしいまちモデル検証作業」ですね。

A:きっかけの一つは、2011年の東日本大震災被災地である岩手県の大槌町で、津波を経験した子どもたちの意見を小学校の再建案に活かしたことでした。復興に向けて子どもたちの意見が尊重され、前向きに取り組めたことが大きな成果と見なされたのです。そして、2015年に日本ユニセフ協会が全国の地方自治体に、この取り組みについてのアンケートを行い、そうした際にこの取り組みへの参加を表明した5つの自治体が、2018年10月からの2年間、「日本型子どもにやさしいまちモデル検証作業」に取り組んでいます。その作業の状況を可視化して、進捗を公開できればと思っております。奈良市や町田市のような人口規模の大きな自治体もあれば、東日本大震災や2018年の北海道胆振東部地震で被災した宮城県富谷市、北海道安平町、そして、全国に先駆けて住民自治条例を制定した北海道ニセコ町といった様々な状況の自治体があるので、全国の自治体に参考となるような検証が行えると期待しています。

「日本型子どもにやさしいまちモデル検証作業」では、ユニセフの「子どもにやさしいまちづくり」の9つの構成要素に加え、当該自治体にとって特有の項目という10番目を加えています。また、こうした取り組みに慣れていない日本社会の実情を踏まえて、子どもにやさしい施策を取り入れやすく、広まりやすくするために、「子どもにやさしいまち」の判定に関して、第3者機関による認証型ではなく、当該自治体による自己評価型にして、自治体が取り組みやすいように配慮しました。これにより、子どもが地元に愛着を持って育つことが推進され、自治体間でも連携しながら継続的に、日本ならではの「子どもにやさしいまちづくり」モデルの確立につながると願っています。

全ての人にやさしい都市(まち)と住まいのあり方を目指して

Q:改めて、ユニセフの「子どもにやさしいまちづくり事業」とSDGsとの関連について教えてください。

A:2015年に国連総会で採択されたSDGsは、17の目標と具体的なターゲット169の項目から構成されています。ユニセフの「世界の子どもたちの権利の実現と健やかな成長を促進するための活動」は、そのSDGsに掲げられる、全ての子どもに公平な機会を提供し、最も取り残されている子どもたちに焦点を当てる「公平性のアプローチ」に基づいています。ユニセフの活動のあらゆる分野がSDGsと密接に関わっているのです。

ユニセフの「子どもにやさしいまちづくり事業」では、SDGsの目標1の貧困に関して、目標3の健康と福祉、目標4の教育などと強い結びつきを持っています。中でも、その目標の11番目には、「全ての人々が、適切で安全で安価な住宅及び基本的サービスへのアクセスを確保できる、持続可能な都市(まち)と住居への転換」がうたわれており、子どもにやさしい、誰にとってもやさしいまちづくりの展開を推進する点で、共通しているのです。

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レオパレス21ではCSR基本活動方針において、SDGs目標の課題解決への貢献を目指しています。ユニセフの「子どもにやさしいまちづくり事業」と関連の深い、「都市と人間の居住地を包摂的・安全・強靭かつ持続可能にする」ために、「良質なサービスと豊かな暮らしの提供」「地域社会への貢献」を重んじ、時代のニーズに沿った持続可能な社会づくりに貢献して、企業理念である「新しい価値の創造」を目指します。

(プロフィール)
公益財団法人日本ユニセフ協会
広報・アドボカシー推進室
シニアマネジャー
三上 健

大学を卒業して商社勤務の後、大学院で国際公法専攻。大学院修了後、ユニセフのモルディブ事務所にて、教育事業及び女性の社会参画事業担当。帰国後、公益財団法人日本ユニセフ協会にて、募金促進事業、開発のための教育事業を担当し、現在、広報・アドボカシー推進室シニアマネジャー。ユニセフの「子どもにやさしいまちづくり事業」の普及を推進。東京都教職員10年次研修及び道府県の教職員対象セミナー(子どもの人権、国際理解教育等のテーマを扱う)を数多く実施。

日本ユニセフ協会の子どもにやさしいまちづくり事業
https://www.unicef.or.jp/cfc/

レオパレス21のCSR基本活動方針
https://www.leopalace21.co.jp/corporate/csr/policy.html

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