なくならない待機児童問題! 保育施設の利用側と提供側の認識の違い

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待機児童問題
2018年4月1日に厚生労働省が公表した集計結果によると、待機児童解消加速化プランの取り組みによって2013年度から2017年度末までの5年間で約53.5万人の保育受け皿を確保し、予定していた約50万人の保育受け皿確保を達成したとしています。

しかし、依然として保育施設を利用できない希望者が多くいます。目標を達成しているにもかかわらず、待機児童の問題が解消されていないのはなぜでしょうか。それは各自治体が報告している待機児童数が実態を正確に反映できていないことが理由と言えます。

そこで、なぜ保育施設を提供する自治体側と利用者側とで待機児童における認識が違うのかを詳しく説明します。

公表される待機児童数は実際の数を反映していない

厚生労働省は毎年4月と10月のそれぞれ1日時点での「保育園等の待機児童数の状況」を発表しています。2017年10月1日時点での待機児童数は5万5433人であり、2017年4月1日時点では2万6081人、2018年4月1日時点では1万9895人であったと発表しています。

待機児童数の調査要領は2017年4月1日から新しい方法を適用しています。これは従来の調査要領では把握できなかった、いわゆる「潜在待機児童数」を調査数に反映させるためです。つまり、これまで厚生労働省が発表していた待機児童数は、実情を正確に反映していなかったということです。2017年10月1日と2018年4月1日時点での調査結果も、自治体によって新要領と旧要領を適用したものとに分かれていると発表しており、まだ現状を正確に把握できていないことが明らかになっています。

潜在待機児童とは

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潜在待機児童とは、政府が定義している待機児童の枠から外れた、保育施設を探しているのに入所できない子どものことです。

野村総合研究所が独自に行ったアンケート調査から推計した、2018年4月時点でのデータがあります。それによると、保育施設の利用を希望しているが利用できない子どもの数は34.8万人であるとしています。2018年4月1日時点の厚生労働省が発表したデータとは単純に比較はできませんが、かなりの開きがあることが分かります。なぜこれほどまでに数字に違いが出るのでしょうか。それは、待機児童の定義が実態を十分に反映していないものだからです。

待機児童調査要領とは

実際に厚生労働省がどのように待機児童数を算出しているのかを説明します。2018年4月1日に算出のための内容が改定されましたが、待機児童であるか否かの定義を次の8つで明示しています。なお、待機児童とは、保育の必要性があり、特定教育・保育施設、または特定地域型保育事業(保育所という)の利用申し込みをしているが、利用していない者としています。

1.保護者が求職活動中の場合、待機児童数に含める
・但し調査日時点で求職活動をしていない場合は待機児童数に含まない
・求職活動を休止していることは、電話やメールで保護者に確認する
・求職活動状況を確認できる書類や求職サイトなどへの登録を証明するものなどがなければ求職活動をしていないとみなす

2.広域利用の希望があるが利用できない場合、居住する市区町村で待機児童数に含める
(つまり他の市区町村でも保育施設への申し込みをしていても、申し込み者の居住する市区町村のみでカウントするということです)

3.やむを得ず保育所等以外の場に子どもを預けている場合には待機児童数に含めない

4.一定期間入所待機のままであり、入所を希望しない場合は待機児童とみなさない

5.保育所を利用しているが、他に転園を希望している場合には待機児童数に含めない

6.産休・育休明けの利用予約は調査日時点においては待機児童数に含めない

7.他に利用できる保育所等の情報を提供するものの、特定の保育所等を希望して待機している場合には待機児童数に含めない
(他に利用できる保育所等の定義は、開所時間が保護者の需要に応えていること、立地条件が登園に無理がないこととしています)

8.保育所等を利用できず育児休暇中の保護者が、入所後に復職することを確認できれば待機児童数に含める
(復職に関する確認は、入所時に確約書を提出してもらった上で電話やメールにて行われます)

厚生労働省と保護者とでは待機児童に関する認識にズレがある

従来の厚生労働省の待機児童数の調査では、保育所を利用できずに育休などを取っているケースはカウントされていませんでした。新しい調査方法では、やむを得ず仕事を休んでいる場合も待機児童としてカウントさせるようになっています。

しかし、新しい調査方法と利用者の事情には、まだ開きがあるようです。新しい調査方法は、とにかく子どもを保育所などに入所させることを優先する考え方に基づいていますが、保護者の側からするとそのように単純には割り切れない事情もあります。

例えば兄弟の子どもがいる保護者の場合、それぞれが別の保育施設に登園するとなると送り迎えが大変です。そこで同じ保育施設への入所を希望したとしても、3.5.7.の条件により待機児童数には含まれません。

また、子どもを預けることができずに求職活動ができない保護者は、1.の条件を満たさないので待機児童数にはカウントされません。

あるいは、7.で情報提供された保育施設に関する良くない口コミ(保育士に問題がある等)などにより入所を希望しない場合にも、待機児童とはみなされなくなります。

このように、厚生労働省が定義する待機児童には、実際の保護者の事情というものが十分に反映されているとは言えません。これが、公表される待機児童数と潜在待機児童数を含めた実情との差異につながっている理由と考えられます。

自治体への負担も課題に

待機児童数を調査するための調査要領を見てみると、自治体にも負担が掛かっているように思えます。

1.と8.を見ると、保護者へのヒアリングなどの確認を行うとしています。必要書類や証明するものを提出しているか否かによって、待機児童とみなすか否かの判断が分かれます。自治体がどこまできめ細やかに対応できるかによって、待機児童数を正確に把握できるか否かに影響するのではないでしょうか。自治体にとっては保護者に対する確認作業や定期的な連絡が必要になりますし、十分な人員が確保できるのかどうかも課題と言えそうです。

政府が待機児童の問題を解決するためには、正確な待機児童数の把握が必要です。しかし、保育施設の利用を希望する保護者の事情がまだ、調査方法に十分反映されていません。そこで自治体にICTシステムなどを導入することで、保護者との連絡や確認作業を効率化・標準化して業務負担を軽減させることができれば、より実態を反映した待機児童数を導き出すことができるのではないかと思います。

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