【後編】実際はもっと多い待機児童? 受け皿整備不足が浮き彫りとなった学童保育の実態『地域と連携し保育の質を高めることで待機児童問題解消へ〜全国学童保育連絡協議会〜』

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実際には待機児童数が2018年は1万6957人いるにもかかわらず、学童保育は定員や規模に関する国の基準が統一されておらず、場合によってはデータ上、待機児童が「0」となるケースもあるなど、自治体などが待機児童数を把握しきれていない問題があることが分かりました。
後編では、引き続き全国学童保育連絡協議会の千葉智生事務局次長(写真右)と佐藤愛子事務局次長(写真左)に、受け皿となる施設や国からの補助金など、学童保育における待機児童問題の解決策について話を伺っていきます。

国からの補助金が年々増加、厳しい学童保育運営状況に光

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Q:学童保育の施設不足について教えてください。

佐藤:施設不足を心配してくださる方から学童保育を自宅でできないかと相談を受けることもあります。たとえば、学童保育の施設を運営する場合、児童の定員を40名として、月額1万円の保育料を保護者からいただいたとしても、1ヵ月合計40万円の中で施設を維持し、職員も複数人雇わないといけません。

子どもたちが大勢で生活する場所なので、耐震性や避難口ないし2方向の出口などが必要になってきます。自宅をそのままというわけにはいきません。子どもたちの生活の場に即した改修工事は必要だと思います。

千葉:学童保育は最初から事業として始まったものではなくて、保護者の方や指導員の方に加えてそこには行政の方も関係しただろうし、建物を貸してくる大家さんも含めて地域の方と一緒に形にしてきたのが、今の学童保育です。なので「まず建物がないところに学童保育の場をつくると同時に、指導員さんだけで中身をつくるのではなく、保護者の方や子どもの思いを受けとめて一緒につくっていく」ということを大切にしてきました。

先ほど40万円の中で、施設を維持して学童保育を運営しないといけないという話をしましたが、実際のところ、なかなかそのような保育料だけでは間に合わなくて、保護者会が地域の中でバザーを開いたり、いろんな工夫をして資金を得ながら職員の給料や施設の家賃を払っている学童保育もあります。しかし、バザーなどを行ったとしても、学童保育が採算を取りながら運営していくのは、なかなか難しいと言えます。

やはり、この事業を継続するには何らかの補助金が必要です。長年ずっと言っていて、国でも1991年に初めて放課後児童健全育成事業の補助金が創設され、2018年度の補助基準額は児童数36〜45人の場合、430.6万円となっています。また、国の学童保育関係予算は、前年度の725.3億円を上回る799.7億円です。

特に18時半を超えて開所する学童保育に対して、職員の賃金改善に必要な補助として、157.5万円(前年度154.1万円)、常勤職員配置のための経費補助として301.2万円(前年度290.4万円)が出るなど、賃金面での職員の待遇向上にも国は力を入れています。このように補助金などは年々、増額傾向にあります。

小規模学童保育運営の難しさと助成金について

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Q:小規模の学童保育施設をつくることは、難しいのでしょうか。

千葉:5〜10人ぐらいの小規模の学童保育を、市町村からの補助金を受けながら運営している施設もあります。ただ、子どもが少人数でも、指導員は複数配置が厚生労働省の基準で定められています。それは指導員さん同士がお互いをチェックすることで、子どもだけではなく指導員さん自身を守ることにもなります。

ちなみに19人以下の小規模学童保育について、国は必要な経費の補助を行っています。その場合、2018年度の補助基準額は55.9万円となっています。

佐藤:指導員さんに長く勤めていただけるようにするためには、さらに待遇を上げていく必要もあります。私たちは厚生労働省に対して、現場での様々な実態を伝えています。とは言え、厚生労働省に言ったからお金が出るというものではないので、私たちとすれば行政を応援しながら頑張ってもらうしかないのが現状です。

千葉:厚生労働省が、例えば補助金メニューを決めますよね。それを受け取って実際の現場に回すのは各市町村です。そのため市町村がどういう判断をするかによっては補助金を満額受け取れないこともあります。

Q:補助金が出やすい、つまり学童保育施設をつくりやすい地域というのはあるのでしょうか。また、モデルケースなどがありましたら教えてください。

佐藤:自治体が子育て支援をしっかり行うことで、若い世代の流入を目指す方向に舵を切れば、学童保育の施設がつくりやすくなることも十分あり得ると思います。自治体によっては国の補助金に上乗せをしてくれる自治体もあるものの、保護者負担が決して少なくない現状や色々な問題点があるのです。

私が住んでいる地域は、指導員さんたちが長く続けることが地域の宝になると思ってくれている自治体です。そう思ってもらえているという面では、その自治体は学童保育施設をつくりやすいと言えるでしょう。でも違う面から「学童保育施設がつくりやすい自治体」としておすすめできるかと聞かれれば、先にも述べたように問題点がまったくないとは言えないですね。

千葉:全国学童保育研究集会では、全国から学童保育にかかわる方が4〜5000人集まって、「自分たちはこういう風にしているんですよ」と、お互いの活動内容を話し合い2日間にわたり交流します。それにより、ほかの地域の取り組み方を聞いて新鮮で貴重な視点に気づかされたりします。
そうしたものを地元に持ち帰り、実践することもできます。この研究集会が53回(1964年に東京都学童保育連絡協議会が開いた研究集会を、全国連協発足にあたり第1回と規定)続いてきた理由は、そこにあると思います。
しかし、学童保育の入会要件からして自治体によって違うこともあり、良い事例があっても全国一律のモデルケースとして採用できないという問題点もあります。なんとか厚生労働省が統一できたのは補助金の出し方だけというのが現状です。

学童保育の真の姿とは

Q:学童保育の在り方が地域によって違うということですね。話は変わりますが、地域の大家さんが、近くに住む子どもたちを守りたいと思い、学童保育事業に参入することについては、どうお考えですか。

千葉:そのオーナーさんが子どもに対して理解があること、そして、子どもが何人も集まる施設ができた時に、周辺の方が温かい目で見守ってくれるかどうか、ということには注意したほうが良いのかなと思います。

後は他の学童保育を視察してみると良いかもしれません。子どもの様子を見ながらそれを自分のところに置き換えてみてください。ご自身の所有する用地や建物が、活発な子どもの動きに耐え得るかなどを確認してみるわけです。大丈夫であれば次に人材ですね。

佐藤:学童保育は、小学生の子どもが通う場所なので、子どもたちが自ら歩いてやって来ます。そのため行きたくなければ足が向かなくなってしまいがちです。運営側の都合で子ども自身がやりたいことを保障しない、静かに過ごさないといけないような場所だと、子どもたちが安定的、継続的に来るのは難しいです。

その辺り、地元にずっといて愛着のあるオーナーさんなら、学童保育を運営していくことは、地域の子どもたちを育てていくという意味で、とても有意義なことだと思います。その施設で子どもたちが育ってきた経験であったり、思い出であったりは、とても大事なものだと思うからです。学校からちょっと道草しながら帰ってきて、実はここの敷地のここに「俺の隠れ家がある」みたいなのは、子どもたちがすごくワクワクしますよね。

学童保育の待機児童問題は、ただ施設を増やせば良いのではなく、保育の質も大切にしていく必要があります。学童保育はもともと地域の方々に支えられてきたものです。地域のことを分かったオーナーさんと子どもたちと共に歩んでいく姿が、学童保育の真の姿と言えます。原点を大切に、子どもたちを見守り続ける存在であり続けて欲しいものです。

(プロフィール)
全国学童保育連絡協議会
事務局次長
千葉智生
1959年生まれ。1983年から自治体職員として、公立公営の学童保育の指導員を32年勤める。市町村・都道府県の連絡協議会で、学童保育をより良くするための活動を行ってきた。2015年から現職。

全国学童保育連絡協議会
事務局次長
佐藤愛子
娘さんが通った学童保育で、指導員から子どもたちの話を聞くたびに、働きながらの子育てを支えてもらっていると実感。2004年から全国学童保育連絡協議会職員となり、2014年から現職。

全国学童保育連絡協議会
http://www2s.biglobe.ne.jp/Gakudou/

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