【後編】建築系学生が空き家の改修で地域活性に挑む『空き家の改修後も、継続的に人が集う仕組みづくりを〜芝浦工業大学の学生プロジェクト「空き家改修プロジェクト」〜』

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空き家改修プロジェクト
芝浦工業大学の建築系学生が中心となって、2014年から取り組んでいるのが「空き家改修プロジェクト」です。
時間を掛けて地域と交流しながら作業を進め、イベントなども盛り込みながら、地域を盛り立てることに貢献しています。2018年度は静岡県東伊豆町、神奈川県開成町、新潟県佐渡島の3地域で活動中です。後編では引き続き、プロジェクト第5期代表の鈴木康右さんに、実際の活動による手応えや今後の展望を伺います。

酒樽の蓋を活かし、大人も子どももそれぞれの高さで集える「場」をつくる

空き家改修プロジェクト
Q:鈴木さんが参加する、開成町のプロジェクトはどのようなものですか。

A:慶応元年(1865年)創業の瀬戸酒造という酒蔵があって、そちらが日本酒の製造を一時止めて外部委託していたのですが、ある企業が買い取って酒造を復活させました。それに伴い、隣接する売店を改修して設備を一新し、今風に再生させるというものでした。これまで売店はカップ麺やお菓子が並ぶ中に日本酒も置いてあるといった感じでしたが、酒造の顔となるよう、遠方からも来ていただいてお酒を楽しく体感してもらえるような空間を目指したのです。酒蔵は企業に発注してすぐに製造所ができ上がりましたが、売店は私たち学生に任せてくれて、酒蔵に比べて建物としては小さいにもかかわらず、私たちはその2〜3倍の時間を掛けて改修したのです。

そこでの工夫としては、もともとの古材を極力活かす形で設計したことです。酒樽が数多く残っていたので再利用することにして、樽の蓋の形を活かした円や半円のテーブルを幾つかつくりました。お酒を中心とした居場所づくりを心掛け、訪れる誰もが囲みやすいように、それぞれのテーブルの高さは変えて設置しています。

人々の交流を呼び戻し、笑顔が見られるのが何よりものやりがい

空き家改修プロジェクト
Q:「空き家改修プロジェクト」を通じて、やりがいや手応えをどのように感じていますか。

A:開成町の場合は、昔からあった売店が生まれ変わったということで、地域の人が懐かしんで来てくれるということもありますし、また、酒造に併設した店舗ですので、日本酒自体の魅力を改めて知ってもらえたり、地域外からも来ていただいたりしているので、瀬戸酒造様の元、地域活性という意味でも本当に上手くいったケースだと思います。竣工後もイベントに参加するなどして関わりを持っているのですが、いらっしゃる方たちの笑顔がとても嬉しいです。

空き家の改修はあくまで手段であって、目的は地域の活性化であり、子どもたちや大人の方たちが喜んで使ってくださることです。それを大切に考えながら、これからも活動していきたいです。

Q:学生にとって、プロジェクトに参加するメリットは何でしょう。

参加学生は年々増えています。大学の授業では設計を学んで模型もつくりますが、頭の中で考えたものを整理してアウトプットするまでがほとんどであり、それが実際の建物になることはないので、そうした経験に飢えているのです。図面から立ち上げ、リアルにそこにある材料などを用いてつくっていく、これは授業だけで体験できることではありません。

もちろん、空き家対策、地域活性化という社会的な課題に取り組みことになるわけですから、その意義も十分に感じます。また、地域に関わる活動なので、何かしら軽はずみな行動をしてしまえば、一気にその地域を裏切ることになってしまうという点も留意する必要があります。いわゆるサークル活動と異なり、やっていることはある意味で「仕事」ですので、大きな責任を常に感じながら、全員が携わっています。

学生は大学の1年生から修士の2年生までが参加しており、設計やプレゼン能力にも差があります。そこで、あえて年齢の離れたペアをつくって動くようにしています。下級生には勉強になりますし、上級生にとっても指導する立場の経験を積めるほか、フレッシュな発想に触れることで固定的な考え方に陥らずに済みます。自主運営なので、こうしたことも皆で考えながら進めています。

改修後も継続的に、地域で用いられる仕組みづくりにも尽力

Q:今後の展開はどのように考えていますか。

A:学生が無償で改修するというので、実は問い合わせをたくさんいただいています。ただ、今は70人という限られた人数でもあり、その改修により地域を活性化するというミッションに、より適した案件のみをお引き受けさせていただいています。

「地域が活性化する」というのは、建物を生まれ変わらせることを通じて、新たに人と人との交流が生まれ、そこに思い出や記憶が育まれ、つながっていくことだと思うのです。その地域の歴史や背景、物産などを知ってもらうことも大切です。今後は、活動を通じてネットワークを広げ、地域間をつなぐようなことも考えていきたいと思っています。別の地域同士の魅力や物産をお互いに紹介したり、イベントなどで人が交流することも推進していければ良いですね。

また、改修した建物が、その後も継続的に使われていくための仕組みづくりにも配慮していきたいです。個人や企業が施主の場合は、運営主体がハッキリしているので継続しやすいのですが、役場などの場合は、ある程度私たち学生のほうで積極的に動いていかないと、活動が尻つぼみになってしまいます。そのため最近の案件では、改修計画の立案時点で将来的な運営まで考えるようにしています。実際、伊豆稲取のシェアキッチンでは、当時の改修メンバーが中心となってローカルデザインネットワーク(LDN)というNPO法人を設立し、現在も運営を担っています。

もうひとつ考えているのは、プロジェクト5期の現在も芝浦工業大学以外の大学から参加する学生が出てきていますが、その輪をもっと全国的に広げていければと考えています。建築系学生だけでなく、実際に経営学部などビジネス系の学生も加わり始めています。ファンディングなど資金集めについても知見が得られるようになるので、将来的にはそうしたものも取り入れていけるかもしれません。

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「地方では、同世代を見掛けることがほとんどない」と語る鈴木代表は、ニュースなどで耳にする少子高齢化を強く実感させられるとのことです。
人口が減り、空き家が増えていく流れ自体を止めることは難しくても、「社会を少しでも明るいほうへ向けていきたい」という真摯な姿勢に、頼もしさが感じられました。
地方では、空き家の賃貸・売却などを希望する所有者が物件内容を登録する「空き家バンク」をつくる自治体が増えています。
IターンやUターンで地方での暮らしを考えたいという人が、そうした制度を利用して住まいを探すことも多いようです。空き家を新しい住人のための住まいとして、また、「空き家改修プロジェクト」のように今までとは違う付加価値を与えることで、空き家が資源となり、地域が活性化するような世の中を目指したいものです。

(プロフィール)
芝浦工業大学の学生プロジェクト「空き家改修プロジェクト」
第5期代表/開成町設計室室長
鈴木 康右
高校時代に留学したドイツで、古い建物が住居として用いられている環境に間近に触れ、建築を志す。2014年、芝浦工業大学工学部建築工学科入学。2016年、学部3年次より「空き家改修プロジェクト」に所属。2018年、芝浦工業大学大学院理工学研究科建設工学専攻入学。「空き家改修プロジェクト」第5期代表を務める。

空き家改修プロジェクト
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株式会社レオパレス21『東京都空き家コーディネーター』に選定
https://www.leopalace21.co.jp/news/2018/0618_2529.html

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