日本の外国人雇用の新基準になる?「外国人就労適性試験」がスタート

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外国人就労適性試験
政府の推進する高度外国人材や留学生の受け入れに加えて、雇用情勢の改善などで在留資格者の就労も増え、外国人労働者は2017年10月現在で127万人を超えています。
そうした中、2018年9月に初めて実施された「外国人就労適性試験」について、その概要をまとめるとともに、外国人の就職希望者と採用する企業それぞれにもたらされるメリットを解説していきます。

語学としての日本語能力に加え、仕事でのコミュニケーションに力点

2018年11月、単純労働を含む外国人労働者の受け入れ拡大を進める出入国管理法改正案が閣議決定され、特に人手不足が深刻となっている建設・農業・介護・造船・宿泊などの分野を念頭に置いて一定技能を有する人材を対象に、特定技能という在留資格を新設、2019年4月より導入が始まります。政府が経済界の要請に応えて単純労働受け入れへと大きく舵を切ったこととなり、今後ますます外国人雇用による就労が日常的な風景となっていくことが見込まれます。

企業が外国人雇用を行う際には、日本語を読む・聞く力の指標として「日本語能力試験」がこれまで使われてきました。N1からN5まで5段階のレベルがあり、日常的な場面で文章を読んで理解することや、自然な会話を聞いて状況が把握できるかといった能力を客観的に示すものです。例えば、「現在はN4だが、仕事をしながらN3を目指せるレベルが望ましい」といった具合に日本語能力の目安が分かるようになっています。これに加えて、日本で働くためのマナーや常識、ビジネス上のコミュニケーション能力など、職場での人間関係やスムーズな接客に役立つ部分を測定するのが「外国人就労適性試験」です。

主催団体の一般社団法人外国人雇用協議会は、質の高い外国人が日本のビジネス社会で最大限に活躍できる環境を整えることを目的として、2016年に設立されました。同協議会の理事であり、外国人材専門の紹介・派遣会社の代表取締役も務める竹内幸一氏によれば、「日本語能力試験」が「正しい日本語」の普及を目指して設計されているのに対し、「外国人就労適性試験」は「日本で就労するために必要な日本語」を測定するためのものであり、正しい日本語であるか否かよりも、コミュニケーションができれば評価が高くなるように設計されているとのことです。

日本ならではの商慣習やコミュニケーションへの適応力を測定

外国人就労適性試験
「外国人就労適性試験」は、日本の言語・文化・ビジネス習慣を理解する質の高い外国人労働者が日本のビジネス社会で活躍できる環境を整えるため、業務の遂行に必要な能力を客観的に測定・評価し、一定レベル以上のスキルを有する高度人材候補となる外国人を認定するものと特徴づけられています。
2018年9月に実施された第1回試験では、共通基礎試験の第一科目、第二科目が行われました。

ビジネス文化・社会常識を測る第一科目は、日常生活及びビジネス社会における規範やマナー、日本人の特性や商習慣などが扱われ、日本企業で周囲と調和しスムーズに就労できる力を評価するものとなっています。また、ビジネスコミュニケーション能力を測る第二科目では、日本特有のコミュニケーションや敬語、効果的な伝え方、話の組み立て方、指示の受け方など上司や同僚との会話を円滑にできる力、さらに電話や来客応対を含む接客・接遇力、ホウレンソウ(報告・連絡・相談)、会議、クレーム対応をはじめ、勤労意識、職場での会話の重要性といったビジネスマナーの理解度を評価します。

試験はマークシート式の選択問題で、対策用の問題集なども発行されています。そして、試験の結果は10段階評価で判定されます。
尚、導入企業のメリットとして、次のような点が期待できます。

・現場の中核人材候補の基本的な能力が明確に定義され、採用・選考が効率化
・日本語・文化・慣習・法令などを理解した人材、一定の技能を有する人材が絞り込めるため、初歩的なミスの低減や商品・サービスの品質維持につながる
・一定の技能を持つ外国人の活躍の場が広がる
・人材確保が難しい現場の人手不足の解消

実際、「日本語能力試験」と併用し、採用や評価する際の指標として広く用いられる可能性は大きいでしょう。また、就労希望者に要望するコミュニケーションレベルも示しやすくなると思われます。
一方、就労を希望する受験者のメリットには、次のような点が考えられます。

・就業時に求められる基準が明確になり、学ぶべき内容や達成すべき水準を把握しやすくなる
・試験内容を採用基準として利用する企業に就職を希望する場合、採用プロセスで有利となる

そのほかにも主催団体が、受験者を対象としたジョブフェアの開催や就職サポートの実施に意欲的なため、就職機会の増加につながることも見込まれます。

業種別に求められるスキル指標としての展開も

「外国人就労適性試験」は主催団体の会員企業を中心に、外国人採用指標の基準のひとつとして、あるいは入社後の教育研修コンテンツにも活用され始めています。第1回試験の受験者は400人以上も集まりましたが、今後はどのような広がりを見せていくのでしょうか。

主催団体では、冒頭に述べた新しい外国人在留資格の付与条件として、この「外国人就労適性試験」を活用することを政府に提言しているとのことです。
また、2019年度以降には、第1回で実施された共通基礎試験に加え、産業分類ごとに求められる個別の業務スキルを測定・評価する、業種別職務遂行能力試験の制度設計も進めていくとしています。想定される産業は、ホテル・旅館、飲食、小売(アパレル・コンビニ)、ファッション、メイク・ヘアデザイン、介護・福祉・保育、農業、警備などとされています。
外国人雇用を推進して労働力不足を補完したい政府の意図とも一致しており、今後の展開に注目です。

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