空き家利活用で街を再生? ドイツでとられたユニークな取り組みとは

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少子高齢化や産業の変化により、日本の各地で空き家が増えています。
一般の民家もあれば商店や工場の建物が空き家となったものもあります。今このような空き家を有効活用する動きが活発化しています。その背景は世界各地でも様々ですが、似たような空き家現象が起きており、ユニークな方法で対応しているところもあります。ここではドイツの例をご紹介します。

日本の空き家問題の現状

日本では今、若い世代が都市に向かい、その一方で高齢者が介護施設に入るなどして空き家となった家が増えています。
同時に、経済的・社会的な変化により、以前は町の商業の中心だった駅前通りがシャッター通りとなってしまったという地域もあります。また、かつては子育て世帯で賑わっていた団地から子どもが少なくなり空き室が増え、その地域の小学校が閉鎖になるなどの事態も起きています。そのほか、製造業が減りサービス業が増えるなどの産業構造の変化もあり、それまで使われていたビルや倉庫が使われなくなったケースも見受けられます。こうした空き家問題を抱える日本では、各々の地域の活性化を図り、健全な社会と経済を確立するために早急の対策が求められています。
同様に世界各地でも似たような現象が起きており、この空き家問題を解決するために、様々な取り組みが行われているようです。そのひとつがドイツの地方都市・ライプツィヒでの取り組みです。

ドイツのライプツィヒで行われている「使用による保守」

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ライプツィヒは、ドイツの首都ベルリンから南に150〜180kmほど、離れたところにある地方都市です。旧東ドイツでは、ベルリンに次ぐ都市として工業が発達し、同時に音楽の街としても知られていました。そんなライプツィヒが衰退の兆しを見せ始めたのが、東西ドイツが統一されたあとです。
市の人口は経済的に強かった西ドイツ側に流れ、街の産業は衰退して空き家が増加し、空き家率が市の中心部で50%に達したこともあったようです。そこで、この空き家の増加を何とかしようと幾つかの案が出されました。
改築して不動産物件として売りに出すという案もありましたが、これは改築費用も嵩み買い手もいない、ということで実現しなかったそうです。これを受けて市は、空き家を取り壊し緑地にするという案を推し進めていましたが、空き家となった建物のほとんどが築100年以上経っており、歴史的な価値が高いため、住民たちが文化財保存の見地から、建物を残すべく行動を起こすこととなりました。

空き家対策に立ち上がった「ハウスハルテン」

そこで2004年、問題解決に立ち上がったのが、ライプツィヒの市民や行政職員、建築家たちが結成した「ハウスハルテン」という団体でした。「ハウスハルテン」は、ライプツィヒ市民のアイデンティティである長い歴史の建物を守るために、ひとつの画期的な対策を考え出したのです。それは空き家となった建物を無料で貸し、その代わりにそこに住む人に、必要に応じて建物を修理してもらい、さらには、セルフリノベーションをすることで、建物をより魅力ある空間にしてもらうというものでした。この案のコンセプトは「使用による保守」と呼ばれ、若者や芸術家の注目を集めるようになったのです。

「使用による保守」はなぜ効果的なのか

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「ハウスハルテン」が提唱した「使用による保守」では、住む人との契約が5〜10年と長期にわたります。また、契約タイプは賃貸借契約ではなく、使用貸借契約です。一般的な賃貸借契約の場合、貸借人は契約が終わる時点で、それまで住んでいた物件の状態を元の状態に復帰させる義務、「現状復帰義務」がありますが、「ハウスハルテン」の使用貸借契約では原状復帰の必要はありません。その反対に、新しい空間造りが要求されます。この新しい空間造りには、のこぎりやインパクトツールなどの必要な工具が全て無償で貸し出されます。加えて、工事のやり方も元職人だった人から教えてもらえます。こうした手厚いサポートによりそれまで眠っていた空き家に灯が灯ることになりました。

「使用による保守」政策で生まれた「日本の家」

「ハウスハルテン」の「使用による保守」は、ライプツィヒ市内で既に20件近くの物件に適用され新しく生まれ変わっています。その中に、日本人をリーダーとする幾人かのメンバーが立ち上げた、空き家再生文化プロジェクト「日本の家」があります。この物件は、ライプツィヒ市内のアイゼンバーン通りの脇に位置していますが、この通りは移民や難民など生活に難のある人が多く生活している場所です。非営利団体である「日本の家」はそのような人たちを励まし、少しでも問題を解決していくために、それまで空き家となっていた建物を改築して立ち上げたプロジェクトです。活動は寄付に頼っていますが、毎週定期的に開かれている「ごはんのかい」が好評で、いつも100人超、90ヵ国以上からの出身者の人たちが集まり、交流を深めているそうです。このようなことが実現できるのも「使用による保守」のおかげだと言うことができるでしょう。

現在のライプツィヒ

2004年に結成され、空き家有効利用の施策を続けてきた「ハウスハルテン」は、それまでの活動内容が高く評価され、2009年にはドイツ連邦政府建設省から「統合的都市発展に寄与する重要な手法」として表彰されました。「使用による保守」による空間造りをはじめとする取り組みで、より多くの人がライプツィヒに住むようになり、街にも活気が戻ってくるようになりました。このことが波及効果を生み出し、ライプツィヒと同じように人口減少で空き家問題に直面していた、ケムニッツやツビカウなどの都市でも「ハウスハルテン」が設立され空き家対策に臨んでいます。そして、空き家に住むようになった人も、経済的なメリットを利用して、自分たちのクリエイティブな活動に力を注ぐことができるようになっています。結果として、その都市から失われていた魅力を再び生み出す原動力にもなっているのです。

日本における空き家対策の例

ドイツのライプツィヒの空き家対策、いかがだったでしょうか。空き家になった背景は日本の事情と異なっていても、空き家という社会問題を抱えている状況は同じです。そして、日本においてもライプツィヒの「ハウスハルテン」のように様々な工夫を凝らした新しい事業が始まっています。
このような事業は、空き家の有効利用案を考案し、より住みやすい街づくりに向けて活動しています。次にその幾つかの例をご紹介します。

商店街の再生(栃木県宇都宮市)

現在、シャッター街と呼ばれる商店街が日本全国で増えています。栃木県宇都宮市の商店街、もみじ通りも例外ではありませんでした。
そんな中、ある建築家がこのもみじ通りにオフィスを移転させ、新しい利用者の誘致を始めたのです。最初に入って来たのはカフェでした。その後、誘致は進み2016年までにレコード店や美容室など、17店舗が開店して賑わいを取り戻しています。

団地や小学校の再生(埼玉県鳩山町)

高度経済成長時代に建設された団地、埼玉県の鳩山ニュータウンは2017年の時点で空き家が100戸以上あり、世帯全体の3.3%を占めていました。そして、少子化によって近くの小学校も閉鎖になっています。こうした空洞化を解消するために立ち上がったのが鳩山町でした。町興しとして実施したのは、小学校の跡地を利用した福祉・健康複合施設の設置や空き店舗のコミュニティセンターへの改築などです。

ドイツのライプツィヒの例で見るように、空き家問題は日本だけのものではなく、世界の各地で起きている現象です。ライプツィヒでの対策プロジェクトと、栃木県と埼玉県の例とは異なっています。ただ、共通点として見逃せないのは、空き家を空き家として放置せず、有効活用を試みているところです。東京都が公募してレオパレス21が選定された、「東京都空き家コーディネーター」も、そうした試みのひとつです。空き家を上手に利活用することは、景観面や防犯面のみならず、地域を再生させ、社会を活性化させるためにも大変重要であると言えるのではないでしょうか。

『東京都空き家コーディネーター』に選定
https://www.leopalace21.co.jp/news/2018/0618_2529.html

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