なぜ潜在保育士が活躍できない? 待機児童問題解消へ埋もれた人材を掘り起こすには

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全国の待機児童が約5.5万人と公表される中、受け入れ側の保育業界では、施設は増やせても、保育士不足によって受け入れを制限しているというケースもあります。その一方で、潜在保育士が50万人にも上るとされており、潜在保育士の数が多い理由とともに、そうした人たちが活躍できる環境をつくるための施策について見ていくことにします。

保育士自身が、自分の子育てで働けない

潜在保育士とは、保育士資格を保有していながら、現在は保育士として働いていない人のことを指します。保育士不足は深刻で、2017年度の保育士有効求人倍率は2.73倍と、全産業平均の約1.7倍にも上っています。2020年度までに待機児童ゼロの目標を掲げる政府は、新たに32万人分の受け入れを目指しており、保育士を1割以上の約7.7万人増やさなければなりません。そのためには、資格を持ちながら現在はそれを活かしていない潜在保育士が現場で活躍できるようにすることが必要です。

厚生労働省調べ(2012年)によると、保育士資格を取得後に一度も保育所や幼稚園に勤めたことがない人が16.8%なのに対し、一度は勤めたが今は勤めていない人は83.2%にも達しています。また、潜在保育士の年代別割合は、40代が32%、50代が28%と多く、次いで30代が19%となっています。女性が多いことを考え合わせると、やはり出産や子育て、その後の復帰の難しさなどの影響があると言えるでしょう。東京都の調査(2013年)でも、保育士の退職理由として「給料が安い」「職場の人間関係」を超えて多いのが「結婚・出産」でした。世の中のお母さんたちの子育てを支援する立場の保育士が、自身の子育てでその仕事から離れる状況は皮肉なものです。保育士自身の子どもも保育できるように施設運営のあり方も検討すべきでしょう。

職場環境の改善や就労条件の柔軟化が復帰のカギに

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一方で、あるシンクタンクの調査では、回答した保育士資格保有者の内の約3人に2人に当たる67.1%が潜在保育士でしたが、全く働いていないのはその過半数となる56.1%で、それ以外は保育士以外の職種に就労していました。非就労の潜在保育士については、60.5%が「今後保育士として働いてみたい」と答えており、その理由として多かったのが「子どもと接することが好きだから」「子どもと関わる仕事がしたいから」というものでした。つまり、現在は離れていても、保育現場への関心は相変わらず強いようです。

また、保育士として働いてみたい潜在保育士が最も重視する条件として3割以上を占めたのが「勤務時間や勤務日など、希望に合った働き方で働き始められること」でした。その内訳の上位は「1日当たり短い時間から働けること(22.3%)」「土日祝日が完全に休みであること(16.8%)」というものです。つまり、こうした多様な働き方に対応する就労環境の整備が、保育士確保のために求められるのです。例えば、短時間勤務制度や、土日祝日を含まないシフト制などの導入が検討されるべきでしょう。そのためには長時間労働対策など、現在働いている職員の就労環境改善も、運営事業者や保育現場が併せて考えていかなければなりません。

「子どもが好き」な保育士気質に甘えず、賃金補助施策も必要

厚生労働省では、都道府県を通じて保育士の復職費用を最大40万円まで貸し付け可能な支援策も用意していますが、残念ながら今のところ利用件数は少ないようです。そもそもの実態把握や対策を考えるところで、自治体はどのような対策をとっているのでしょうか。

例えば、千葉県が2016年に行った県内の保育士有資格者(約5万4000人)への実態調査では、回答があった1万8599人の内、7074人が潜在保育士であることが確認できました。その中で、働く意思があると答えた約6割に向け、保育施設と働き手をマッチングさせるために県がつくった、保育士専用人材バンクへの登録を案内しました。これを通じて保育士の仕事に就く人が増え、2017年度末には延べ450人以上にも上っています。登録により、勤務場所や時間帯など、本人が希望するような就労環境に出会う機会を得たということでしょう。

全国の潜在保育士の正確な数は不明ですが、こうした自治体の調査結果を踏まえた試算では、最大50万人と予想されます。働きたくなる環境整備やその情報発信、マッチングサービスの提供などが、保育現場や行政には求められるでしょう。また、保育士人材の「子どもが好き」「子どもたちのためにがんばる」という気持ちに頼るばかりではなく、彼らの生活を支えるための報酬、賃金水準についても、考えていかなければなりません。

厚生労働省発表の2017年度賃金構造基本統計調査によれば、民間保育士の平均月額給与は約23万円です。これは、全産業平均よりも約10万円も低い水準となります。保育士の賃金は、国が決める公定価格がベースとなっており、2013年度には給与加算の仕組みが設けられましたが、それでも2017年度までの年収ベースでの賃上げ率は8.5%と、厳しい状況です。首都圏など、特に保育士不足に悩む地域では、自治体や運営母体が賃金を上乗せしていくことも必要かもしれません。

賃金補助などの仕組みづくりや職場環境の改善、多様な働き方が可能な選択肢の提案といった施策により、技術や経験、そして思いのある保育士が数多く働けるようにすることが求められます。

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