待機児童減少の陰に新たな問題が? 立ちはだかる「3歳の壁」とは

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3歳の壁
「都市部の人口集中」「女性の社会進出」に伴って、我が国の保育利用率は年々増加しています。全国的に見ると、毎年2万人を超える子どもたちが保育所に入れず、ご存知の通り「待機児童」と呼ばれているのが現状です。これを受け、打開策として講じられた新制度によって、小規模な保育施設が爆発的に数を増やし、待機児童の解消にも兆しが見え始めました。

ところが、2歳児までしか預かれない小規模保育所の急増は、目には見えにくい問題を引き起こし始めているのです。この「3歳の壁」について、現在の状況をお話ししていきたいと思います。

新制度によって急増した小規模保育所

まずは、「小規模保育所の増加」に至ったプロセスについて、簡単にお話ししましょう。
小規模保育所とは、5歳までの子どもたちを見る幼稚園や保育所と異なり、0〜2歳児のみを対象とした保育施設のことです。様々な基準が設けられてはいるものの、ビルの一角など小規模でも運営できるため、開業の敷居が低いことが特徴と言えます。冒頭で少し触れましたが、2015年から施行された「子ども・子育て支援新制度」によって自治体から補助が受けられるようになり、ここ数年で一気に急増しました。このような措置が講じられた理由は、「待機児童の大半は1〜2歳児が占めている」という状況があったからです。

厚生労働省の統計によると、2013年4月に228万人だった保育申込者数は、2017年4月時点で265万人にまで増えています。しかしながら、依然として待機児童数は2万人強を推移しており、その内の70%は1〜2歳児という集計結果となっているのです。

そこで政府は、保育ニーズの高い1〜2歳児の受け入れ先を優先的に行うため、新たに制度を整えたというわけです。その結果、2018年4月の待機児童数は、過去7年間で初めて2万人を下回りました。現段階では保育所への申込者数が受け入れ人数を上回っていますが、2020年にはこれが逆転し、1〜2歳児の待機児童は解消されると見込んでいます。

保護者の前に立ちはだかる「3歳の壁」

3歳の壁
このように、以前は待機児童というと「首都圏の共働き家庭における、乳幼児の受け入れ不足」というイメージでしたが、徐々に回復の兆しが見えてきたようにも思えます。しかし、ここで新たな問題になってくるのが小規模保育所を卒園した後の受け入れ先、すなわち「3歳の壁」なのです。小規模保育所には2歳児までしか預けることができないため、卒園と同時に別の保育所、または幼稚園へ移る必要があります。

そもそも小規模保育所を設立するためには、「連携施設」と呼ばれる受け入れ先の保育所を定めることが義務づけられていました。内閣府のホームページによると、設立には次の3項目をサポートできる保育施設と連携関係を築くことが求められています。

・保育内容の支援
・代替内容の提供
・卒園後の受け皿

これだけ支援できる施設が後ろに控えているならば、保護者としても心配がありません。ところが、現実には連携施設を設定している小規模保育所は全体の46%しか確認されていません。これは2015年当時、まずは0〜2歳の受け入れ態勢を整えることが急務だったことから、連携施設を決めるまでに経過措置として5年の猶予を設けたためです。つまり、連携施設を設定していない54%の小規模保育所の児童は、卒園後に入所先を探すため、再び「保活」を行う必要が生じています。

3歳児の受け入れ先を探すのは、「乳幼児の時以上に困難」といっても過言ではありません。保育所を探そうにも、多くの保育所では2歳児がそのまま持ち上がるため、空きがない状況です。幼稚園に限っては「保育」ではなく「教育」に重きを置いているので、行事が多い上に延長保育などもなく、共働きの家庭には厳しいでしょう。いずれにせよ、この場合の保活は容易ではなく、結果として遠方の保育所に預けたり、休職を余儀なくされることさえあります。

つまり、一見回復の兆しが見える待機児童問題ですが、「見えない部分で問題を孕んでいる」ということになります。一時的に数字が良くなってはいるものの、完全解消への道程はいまだ険しいようです。

連携施設の設定が困難な3つの理由

3歳の壁
今後も増加が見込まれる小規模保育施設ですが、完全に待機児童を解消するためには、卒園児の受け入れ先を増やすことが急務と言えます。しかしながら、連携施設の確保が難しいがゆえに、54%もの小規模保育所が連携できていないのです。これには、大きく分けて3つの理由が考えられます。

・保育所にとってはメリットが少ない
・幼稚園と連携を取るのが困難
・新設しようにもコストが高い

まず、現在の制度では「保育所にとってメリットが少ない」ということがあります。待機児童の多い首都圏などは当然保育のニーズが高いため、保育所としては連携しなくても、容易に定員が埋まります。反対に、連携している分の入所定員を空けていたにもかかわらず、転勤などによって急に定員が埋まらないという可能性もあるため、保育所側としてはデメリットのほうが大きいのです。利益が見込めなければ連携しようとは考えませんから、インセンティブなどのメリットを提示しない限り、そう簡単には連携できません。

次に、幼稚園と連携するケースですが、先ほど少し触れたように、幼稚園と保育所は明確に異なる施設です。幼稚園は「児童の教育」が目的であるため、行事が多い上に延長保育もありません。そのため、対象となる家庭は「専業主婦家庭」がほとんどです。小規模保育所を利用するのは「共働き家庭」が多く、この点で対象の方向性が違ってくるわけですから、連携関係を結ぶのは容易ではないでしょう。

最後に、小規模保育所の経営者が「5歳まで預かれる保育所」を新設する可能性ですが、これも現実的には厳しいようです。規模の拡大は人材確保もさることながら、何より施設・設備を大幅に拡充する必要があります。耐震性などの建築基準も満たした上で、「調理室」「ほふく室」「乳児室」などの部屋を設けなければなりません。そもそもの話として、新設が容易であるなら保育所不足は起こりません。

待機児童解消には行政の働き掛けが不可欠

小規模保育所の増加によって待機児童は減少傾向にあるものの、これまで見てきたように解決しなければならない問題は山積みです。特に保育所間の連携を高めるためには、行政の積極的な働き掛けが不可欠と言えるでしょう。一例として、保育事業者の交流する機会を設けたり、小規模保育所と連携した場合にインセンティブを付与するなど、かなり積極的に動いている自治体も見られます。

また、保育所を新設するための制度という点では、事業所内保育所の設立を上手にサポートできる仕組みがあると良いでしょう。社内で子どもを預けることができれば、女性社員の負担を減らせるほか、社員同士の交流も広がりますし、何より企業のイメージアップにもつながるはずです。

一方で、新設するには保育士や設備に関わる費用を捻出する必要がありますし、クリアすべき条件も緩くはありません。事業所内保育は制度を緩くし過ぎてしまうと、これを悪用する企業も出てきてしまいます。難しい部分も様々にありますが、上手にサポートできるシステムを確立できれば、待機児童も大幅に減るはずです。

レオパレス21でも、自社で運営する介護施設「あずみ苑グランデ 花咲の丘」(埼玉県上尾市)の敷地内に、「花咲の丘保育所」という保育施設を新設し、従業員のお子さんを預かっています。少しでも待機児童の解消に貢献し、将来的には「子どもが保育所に通うのは当たり前」となるよう努めています。

企業保育所開設のお知らせ|レオパレス21
https://www.leopalace21.co.jp/news/2017/pdf/0724.pdf

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