【前編】日常介護の難題に有効な一手? 世界も注目の排泄予測デバイス「DFree(ディー・フリー)」で介護者負担を軽減 『トイレ(排尿)でお悩みの方に朗報! 介助負担を減らし、自立支援も促す 〜トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社〜』

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高齢者介護の際、食事や入浴の介助と並んで負担が大きいと言われているのが、排泄ケアだとされています。
どのようなタイミングでトイレに連れて行くのか、遅れてしまえば大変なことになります。
高齢者には移動自体がひと苦労なのに、せっかく行っても何だか出ない……といったことも珍しくありません。多数のご利用者様がいる介護施設では、ひとりで何人ものお世話をするケースもあります。このような状況に役立つのが「DFree(ディー・フリー)」、ウェアラブルの排泄予測デバイスです。
どのような仕組みで、どのように使われているのかを、その生みの親であり実用的な製品として実現させた、トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社 代表取締役の中西敦士氏にお聞きします。

30歳目前、路上での失禁体験から、漏らさないためのソリューション開発へ

排泄予測デバイス
Q:まず、排泄予測デバイス「DFree」について、教えてください。

A:下腹部に装着すると、膀胱の膨らみを超音波で計測し、尿の貯まり具合を数値で知ることができます。
そのことによって排尿のタイミングが分かるというものです。2017年4月より介護施設などの法人でご利用いただき、その数は200施設に及んでいます。2018年7月からは個人向け販売も行っております。

そもそもの始まりは、私がアメリカ留学時代の引越し作業の際に、路上で便を失禁してしまった体験がもとになっています。当時29歳で、数年の社会人経験と青年海外協力隊を経て、自分で何かビジネスを始めてみたいとシリコンバレーで学んでいたところでした。その年齢ですから、失禁は大きなショックでした。自分自身の生理的に不快な感情と、人に知られたら恥ずかしいという気持ち、さらに言うならば人間の尊厳を奪われたような、心理的なショックですね。

また、同時期に日本のネットニュースで、大人用おむつの市場が初めて子ども用を上回ったという報道に触れ、世の中にはそんなに排泄の悩みを持つ大人や高齢者がいるのだと気づかされたのです。それは、大きな社会問題でした。

超音波で体内をモニタリングし、トイレ予測をしてしまうという、常識をくつがえすアイデア

排泄予測デバイス
Q:そこで解決策として、排泄予測デバイスを思いつかれたわけですね。

A:そう一足飛びにではなく、「漏らさない」ためのソリューションとして、色々なアイデアを思い巡らしました。
例えば、飲み薬などで排泄をしなくても良い体にできないかとか、せめて臭いがなければ不快さのインパクトが少なくて済むのではないか、などですね。そのようなアイデアのひとつに、事前に予知できるようにするといったことがあり、それができるウェアラブルのデバイスというものが生理学的にも技術的にも可能性を感じられたため、事業化を目指して製品づくりに着手したわけです。
とは言え、私は文系人間でしたので、技術的なアドバイスや開発については、友人知人を辿っていきました。開発をメインで進めてくれ、現在当社の技術責任者を務めているのは中学時代からの親友です。光学機器メーカーで内視鏡の開発に携わった経験を持っていて、当時たまたま彼も留学中であり、私のアイデアを技術的に固めていく助けとなってくれました。
また、体内の便の様子を知るためのツールには、妊娠中に胎児の様子を見たりすることでおなじみの「超音波」が適しているかもと思い、人づてに専門家を紹介してもらうなどして、現在の「DFree」に近づいていったのです。最初は便の開発を進めていましたが、技術的な難易度や、データが取れる頻度が尿の方が多く(排尿は1日7〜8回、便は1回程度)、排尿の方が早く商品化できそうだし、排尿で困っている方もたくさんいる、ということから、まずは排尿予測を製品化することにしました。原型ができてからも改良を重ね、今のものは7代目くらいになります。

Q:超音波検査、いわゆる「エコー」は病院で診てもらうものですが、「DFree」はウェアラブルですね。

A:小さなセンサー部分にジェルを塗って、へそ下の下腹部にテープで留めます。
ケーブルでつながった本体にはBluetoothの発信機とバッテリーが内蔵され、ベルトに引っ掛けたり、衣服やストラップに付けたりしておきます。
膀胱というのは水風船のように、中に何もないとぺちゃんこですが尿が溜まってくると膨らむので、それを「超音波」で検知します。そして、センサーから得られたデータが本体からスマホなどに飛び、専用のアプリで確認できるという仕組みです。その時点での膀胱の状態だけでなく、過去の記録を折れ線グラフでログとして見ることもできます。
個人向けも法人向けも製品は同じですが、ひとりのデータを見るか、介護施設の複数のご利用者様のデータを見るかで、アプリの仕様が異なります。
データを管理・活用する方も、個人向けであれば主にご本人か在宅介護をされているご家族の方になりますし、介護施設であれば複数のスタッフの方々なので、法人向けは複数の端末で通知を受けられるようになっています。

IoT機器の管理画面をプラットフォームに、介護施設での見守りを一元化

Q:介護施設での使われ方を、もう少し詳しく教えてください。

A:理想的なのは、ご利用者様ひとりにつき1台を装着、計測いただくオンデマンドケアですが、介護施設では決まった時刻に順番にトイレに誘導する、定時排泄のスケジュールを組んでいるところが多いので、オンデマンドで対応しようとすると現場のオペレーションが大きく崩れてしまいます。そのため実際には、ご利用者様それぞれに数日ずつ装着してもらいながら、その方の排泄の傾向を知ってアセスメントに役立てるといった使い方が多いです。そうしますと、定時排泄が全員必ずしも3時間ごとでなくても、人によっては2時間が良かったり、4時間で大丈夫だったり、夜間はしっかり貯められていることがわかったり、と、より良い排泄ケアが可能になるわけです。

また、ご利用者様の中には排泄の不安が大きくて何度もコールされる方もあり、呼んでもすぐに来てくれないなどご不満を持たれたり、介護士も大変な思いをしたりすることもあります。そのような場合にはオンデマンドケアが有効です。「DFree」で尿の貯まり具合を一緒に見ていただきながら、まだ30%だから行かなくても大丈夫と伝え、安心してもらうなどの適切なトイレケアにつなげていただいています。

Q:介護施設でのご利用について、今後の展望はございますか。

A:現場の声を聴くと、「DFree」に限らず、ケアロボットや離床センサーなど、介護領域のIoT機器がいろいろと導入され、それは良いことだけれども、管理する画面や端末がそれぞれにあって全部を確認しきることができない、ということがあります。ご利用者様一人ひとりについての状況が、ひと目で見てとれないと、介護現場では適切に役立てられません。

そこで、複数のIoT機器からの情報を一元管理するプラットフォームの開発プロジェクトが進んでいます。「社会福祉法人善光会 サンタフェ総合研究所」が中心になって開発している「スマート介護プラットフォーム:SCOP(Smart Care Operating Platform)」というもので、当社も参画しています。これにより、介護現場で、さらに適切なケアの提供ができるようになることを目指しています。

(プロフィール)
トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社
代表取締役
中西 敦士

慶應義塾大学商学部卒。大手企業向けのヘルスケアを含む新規事業立ち上げのコンサルティング業務に従事。 その後、青年海外協力隊でフィリピンに赴任。2013年よりUC Berkeleyに留学し、2014年に米国にてTriple Wを創業。2015年に日本にてトリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社を設立。著書に「10分後にうんこが出ます−排泄予知デバイス開発物語−」(2016年・新潮社刊)。

トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社
https://www-biz.co/

法人向け「DFree Professional」排泄予測サービス
https://pro.dfree.io/

個人向け「DFree Personal」排泄予測サービス
https://dfree.biz/

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