【前編】「スマート介護士」と「スマート介護プラットフォーム」で介護ロボット・ICT機器を活かす時代へ! 『介護ロボット・ICT機器を充分に活かせる人材育成が急務! 〜社会福祉法人善光会 サンタフェ総合研究所〜』

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高齢化が進み介護人材が不足する中、介護ロボットの導入は人手不足解消の切り札のひとつになると期待されています。社会福祉法人善光会ではサンタフェ総合研究所を設立し、介護ロボットを積極的に導入してきました。

介護ロボット運用の専門資格として創設した「スマート介護士」について、社会福祉法人善光会 サンタフェ総合研究所所長であり事業戦略室室長の松村昌哉氏にお聞きしました。

「スマート介護士」は介護ロボットの導入支援策のひとつ

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Q:サンタフェ総合研究所の概要について教えてください。

A:サンタフェ総合研究所は社会福祉法人善光会の一部門です。介護分野の事業を運営する社会福祉法人は、ほとんどの収入を介護保険収入で賄っています。しかし、高齢化で生産年齢人口が減少していく中、今の介護保険のスキームでは成り立たなくなっていきます。そこで、健全な経営基盤を確立していくために、介護保険に頼らない収入源を確立する必要がありました。

私たちは介護ロボットの活用をしていく中で、メーカーから開発に入ってもらえないか、あるいは、ほかの介護事業者から、介護ロボットの導入支援をやってもらえないかと声を掛けていただくことが多くありました。そこで、サンタフェ総合研究所を設立し、正式に事業化を進めたのです。

Q:介護ロボット運用の専門資格として、「スマート介護士」の資格を創設された背景についてお聞かせください。

A:介護ロボットの導入を始めた5年ほど前から、「スマート介護士」制度の構想はありました。法人内で実施している研修を世の中に出すことで、介護ロボットを使う介護士が増えるのではという思いがあったためです。

また、介護事業者へ介護ロボットの導入支援をリリースした際、様々な内容のご質問やお問い合わせなどがあり、全てに対応するのは不可能だと感じました。
私たちの介護ロボットの導入支援では、特定の介護ロボットが使えるように支援するのではなく、介護職員がオペレーションに柔軟性を持たせられるようになることを重視しています。
そこで介護職員向けに、これまでにはない、介護ロボットのオペレーションの概念を書いた本をつくることを考えました。とは言え、介護職員にただ本を読むよう促すのは難しいため、資格制度を創設することになったのです。

「スマート介護士」は介護ロボットのオペレーションの概念を身につける資格

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Q:「スマート介護士」の試験内容など詳細を教えてください。

A:「スマート介護士」のテキストに沿ってお話しすると、5章に分かれています。
第1章は「介護ロボット概論」で、介護ロボットとは何かを解説しています。「スマート介護士」はメーカー向けの資格でもあり、介護についての知識が十分でない方のために、第2章には「介護基礎論」を入れました。

3章目からが「スマート介護士」に関する内容です。第3章の「介護オペレーション基礎論」では、オペレーションは一律ではなく状況によって変化させなければならないことを示しています。最適なオペレーションは、職員の状態、入居者様の状態、施設や福祉用具の状態によって変わり、適切な人員配置やサービスの質に関わっていくという理論に基づいたものです。

第4章の「介護ロボットの評価論」では、これまではメーカー目線のものであった介護ロボットの評価スケールに対して、ユーザー目線による評価基準の必要性があるという点を述べています。

第5章は「介護ロボットの導入と運用の実践」で、介護現場の問題解決プロセスと介護ロボットの導入に関する内容となっています。介護ロボットを導入することが目的になってしまい、介護ロボットをどのように使うのかが曖昧で、その力を活用しきれていないという施設も少なくありません。まずは施設の課題を特定し、課題を解決するために必要なのは何かを分析することから提案しています。そして、課題解決のために介護ロボットが必要とされる場合に、導入を検討するべきであると説いています。介護ロボットの選定方法や導入に際してのチームの編成方法など、導入プロセスのステップについても触れました。

Q:今年の3月中旬に第1回目の「スマート介護士」試験を実施されましたが、級の区分やレベルについて教えてください。

A:第1回目の試験では、「スマート介護士Basic」と「スマート介護士Expert」の試験を実施しました。
Basicは一般の介護職員や介護ロボットのメーカーの方、Expertはよりオペレーション構築に近い方を想定していますが、対象者の限定はしておらず、介護に関わる全ての方に受験していただきたいです。特に介護施設では、リーダー等の一部の職員が受験するだけでなく、全員が知っていてほしいと思っています。
ただ、介護施設は職員が24時間動いていることもあり、介護職員全員が同時期に試験を受験することは、人員不足や負担増加などといった問題にもつながり、現実的ではありません。そのため、介護事業者からの資格取得にはまずはユニットリーダーや主任クラスと、介護職経験が1年以上ある方に、「スマート介護士Expert」を受けていただくことをおすすめしています。
※「第2回 スマート介護士資格 Basic & Expert」2019年8月25日(日)開催

来年度を目途に、実際に職場のオペレーション改革を実行できるスキルを取得していることを想定した資格として、上級の「スマート介護士Professional」をスタートさせます。Expertの取得者を対象に研修形式で実施する予定ですが、介護福祉士の資格を要件にするかの検討中です。さらに、介護事業者や介護福祉士の養成機関から、「入門編として研修で取得できる資格を」というニーズがあることから、「スマート介護士Beginner」を設ける予定です。

Q:「スマート介護士」試験の反響はいかがでしたでしょうか。

A:「介護職員の給与が低いのに新たな資格は負担になる」など、WEB上では批判の声も多くありましたが、私たちの施設では、介護福祉士よりも「スマート介護士Expert」のほうが、資格手当が高く設定されています。現状では資格手当がつかない施設でも、長期的に見れば「スマート介護士」によって生産性が向上することで、必要となる職員数が減ることで、職員一人一人に支払われる給与アップにつながっていくのではと考えています。

また、「介護ロボットの資格は不要なのでは?」という意見もありました。確かに介護ロボットごとに使い方は異なり、操作方法は説明書を見れば分かります。しかし、「スマート介護士」は、介護ロボットの使い方をマスターするための資格ではなく、介護のオペレーションを介護ロボット等により柔軟に変化させていくことができる人材を育成するものです。
広報活動や資格を取得した方などの仕事ぶりから、「スマート介護士」の目的を知っていただけたらと思います。

介護ロボットの導入で「生産性」を向上し、人手不足問題も解消へ

Q:高齢化社会の問題や介護の現状についての考えをお聞かせください。

A:少子高齢化による介護人材の不足への対応策として、「生産性」の向上が挙げられますが、介護業界では「生産性」という言葉が受け入れられにくい雰囲気があります。
しかし、思いやり重視のみでサービスをするという考え方であると、事業の持続性という観点が抜け落ちてしまいます。複数の介護ロボットが運用できる「スマート介護プラットフォーム」は、「介護の見える化」が特徴ですので、生産性を向上させるとともに、特別養護老人ホームでの介護サービス品質のスコアを一覧にできるような仕組みにしていきたいと考えています。

現在、特別養護老人ホームの人員配置の全国平均は2対1(被介護者2名に対して介護・看護職員1名)で、10年以上変わっていませんが、私たちの施設ではほぼ2.9対1で運営しています。ほかの施設でも介護ロボット等を活用して、この人員配置で運営ができれば、介護人材需要量が減ることで、人材不足が緩和されるため、介護の質を向上させることに注力できることと思います。

後編では、複数の介護ロボットをコントロールする「スマート介護プラットフォーム」についてお聞きします。

(プロフィール)

社会福祉法人善光会
サンタフェ総合研究所所長
事業戦略室室長
松村 昌哉

2012年社会福祉法人善光会入社。事業戦略室にてマーケティングに基づく経営改善戦略策定及び新規プロジェクトの推進を行う。2013年の介護ロボット研究室設立時より、研究並びに導入から実証までに携わる。2016年「特別養護老人ホームフロース東糀谷」副施設長に就任。2017年「介護老人保健施設アクア東糀谷」施設長に就任。現在、2017年10月に設立された「サンタフェ総合研究所」所長と事業戦略室室長を兼任。

サンタフェ総合研究所について
https://www.zenkoukai.jp/sfri/

スマート介護士資格について
https://sfri.jp/smartcaregiver/
※「第2回 スマート介護士資格 Basic & Expert」2019年8月25日(日)開催

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