補助金支援で保育士不足でも保育所が設置しやすく! 待機児童解消への効果とは

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待機児童問題はどのように解消する?

女性の社会進出が進み、各家庭における子育てと仕事の両立はこれまでにも増して大きな問題となっています。
これに伴い生じているのが、待機児童問題です。子育て世代による保育所への申し込みは年々増加しており、2018年4月時点での申込者数は約271万人に達しました。
これは、前年度と比べると約6万人の増加となっています。このような状況を受けて、政府は保育の受け入れ拡大を目指した様々な取り組みを進めているところです。 その一環として、2018年6月14日の国家戦略特区諮問会議において、国家戦略特区内に限定して「保育にあたる人の6割以上が保育士」などの一定条件を満たした認可外保育所に運営費の補助を行うことを決めました。どのような経緯でこの制度の導入が決定されたのでしょうか、そしてその内容とは如何なるものなのでしょうか。以下では、施策の背景や概要、メリットとデメリットについてまとめます。

待機児童問題は都市部に集中

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そもそも待機児童問題は、全国的に生じているのでしょうか。
厚生労働省によると、全国の市区町村の内、約8割は待機児童ゼロであるということです。その一方で、都市部では待機児童数が多い状態にあり、それは全体の約7割にも及ぶということです。
都市部とは、首都圏や近畿圏とその他の指定都市などを指しています。つまり、待機児童問題は都市部に集中的に見られる問題ということになるのではないでしょうか。 待機児童問題では、「保育の受け皿の確保」「保育の質」という2つの問題が指摘されており、保育所などの施設自体が不足している点と、保育を担う人材が不足している点に対応する必要があります。保育を担う人材に関しては、2020年度までに約7.7万人を確保することが目標とされ、賃金増加などを含む処遇改善・資格取得支援・就業継続支援・再就職支援などの取り組みが総合的に実施されています。 待機児童の解消に向けた取り組みは、国が定める設置運営基準などに従って、各自治体が実施する仕組みとなっています。厚生労働省が公表している資料によれば、待機児童が100人以上減少した自治体の傾向を見たところ、自治体の受け皿整備への取り組みが一定の効果を生んでいる状況が認められたと言えるのではないでしょうか。

待機児童問題に対する政府による支援

それでは、政府は待機児童問題に対してこれまでどのような対策を行ってきたのでしょうか。
政府は、各自治体による待機児童問題に関する取り組みを効果的に支援することを目標として、予算の確保や企業主導型保育事業などの施策を実施してきました。
その結果、2013〜2017年度にかけて約53.5万人分の受け皿を増やしたとのことです。これは、当初掲げた政府目標であった50万人分の「保育の受け皿」の拡大を達成するものでした。

2019〜2020年度までの2年間では、東京都をはじめ意欲的な自治体を支援する目的で、約32万人分の「保育の受け皿」を確保するための予算措置を図るとしています。
そして、都道府県・関係市区町村・保育事業者・関係省庁などが参加する協議会を設置し、受け皿確保に向けた支援計画を策定し実施していくこととなっています。
最終目標としては、2020年末までに全国の待機児童数をゼロにすることが掲げられています。

保育士不足や保育所確保に関する新たな対応策

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待機児童問題では、「保育の受け皿」と「保育の質」の両方を確保する取り組みが各自治体で進められることが大切です。
このような取り組みに関連して、大阪府・大阪市は政府に対し、人員配置に係る特例許可に関する提案を行いました。
そして、この提案に基づいて議論が交わされ、2018年6月14日、政府は国家戦略特別区域諮問会議において、保育支援員等を活用しながら待機児童の解消に取り組むことを認める方向で特例を設けると決定しました。

この特例について少し詳しく述べると、その保育所の職員の内、保育士が6割以上いれば、認可保育所と同様に運営費の補助が受けられることを認めるというものです。
これは、待機児童問題が解消するまでの時限措置とし、計画期間は5年間とされました。
但し、各自治体の判断によって5年以上に計画を延長することも可能です。
この特例が認められるのは、政府が指定する国家戦略特区の自治体であり、都市部の多くをカバーしていると言えるのではないでしょうか。厚生労働省は、2019年度予算の概算要求に、特例に必要な財政支援の必要経費を計上する考えを示しました。

保育施設には、国の定める設置基準を満たした認可保育所と、それ以外の認可外保育施設があります。
認可保育所は、原則として全ての職員が保育士の資格を持っている必要があります。
それに対し、認可外保育施設では、職員の3分の1が保育士であれば良いとされており、「保育の受け皿」として拡充し得る可能性を秘めていました。
しかしながら、認可外保育施設は国の認可を受けていないために国から財政支援を受けることができず、受け皿として十分な機能を果たせていませんでした。

新たな対応策のメリットとデメリット

今回の特例は、認可外保育施設に対する国からの財政支援を認めており、「保育の受け皿」を確保しようとする動きとして大きなメリットがあると考えられます。保育人材の不足を踏まえた現実的な妥協策と位置づけられるものではないでしょうか。
認可外保育施設には保育支援員など一定の研修を受けた人員が配置されることとなりますが、これらの人々が保育の現場で経験を積み、保育の資格を取得して保育士となれれば、人材不足の解消にもつながる可能性があります。

一方で、「保育の質」の問題もあります。この特例はあくまでも待機児童解消までの時限措置とされていますが、計画期間である5年間を過ぎても自治体の裁量で延長できることなどが明記されており、保育士が十分に設置されない保育施設が継続的に存在するのではないかという点です。
また、現場で保育士に掛かる労働負担が大きくなり、仕事の質が下がり、離職者も増えるのではないかという点も危惧されています。特例では「保育の質」を確保、向上するために、自治体と政府が協力しながら実施状況を把握し、分析、評価すると示されており、この点を十分に機能させる仕組みが必要となってきます。

以上、政府による待機児童問題に関する取り組みを踏まえて新しく設定された特例の内容を見てきました。
都市部での待機児童問題は待ったなしの状態で、今回の特例は「保育の受け皿」を確保するための現実的な解決案のひとつと言えるでしょう。
大阪府・大阪市といった現場からの提案が特例の実現へとつながりました。そして、待機児童問題は「保育の受け皿の確保」だけではなく、「保育の質」が何にも増して重視されなければいけないことも当然でしょう。今回の特例は、「保育の質」を落としかねないといった批判も受けています。
国と自治体が連携して保育の現場を支援する体制づくり、その中で「保育の質」を分析、評価する仕組み、さらに保育人材を確保する取り組みをより発展させることが重要になってくると考えられます。

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