【前編】目指すは子育てが「まちの力」で豊かになる社会! 「生活者からできること」を実践したSDGs活動『子育てで孤立しない、それぞれの人の力が活きるダイバーシティ社会へ 〜認定NPO法人 こまちぷらす〜』

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少子高齢化が進む中、国や行政によって様々な「子育て支援」が行われていますが、まだまだ十分とは言えない状況が続いています。
そうした中、「子育てを、まちでプラスに」をスローガンに活動している認定NPO法人が「こまちぷらす」です。

前編では、「こまちぷらす」を設立した経緯や目的、活動の内容などについて、「こまちぷらす」の代表を務める森祐美子氏(写真左)に話をお聞きしました。

「地域の子育て情報」と「居場所」を提供することを目的に設立

Q:「こまちぷらす」とは、どのような経緯で設立されたのでしょうか。

森:第一子を出産した時、地域に知り合いがいなく、何とも言い知れない「孤立感」を感じていました。そこで毎日何時間も掛け、インターネットで「誰かと出会える場」を検索していたのですが、求めていた地域の情報には辿り着けませんでした。

しかし、家庭訪問をしてくれた保健師さんが置いていった1枚のチラシに「この地域に子育ての拠点をつくるので意見を出してくれる市民を募集します」という文字を見つけたのです。その会合に参加したところ、行くべき場所に行けば地域の情報が得られることを知りました。地域の子育て情報の多くはインターネット上でなく、チラシなどの紙媒体で告知されていたのです。

子育てをしているお母さんたちは皆、私と同じような孤立感を抱いているのではないかと思いました。子育てをしていても孤立しないで、様々な多様性を受け入れ共生するダイバーシティ社会をつくることを目的として設立しました。

Q:ご自身の経験から「こまちぷらす」を設立されたということでしょうか。

森:はい。子育てをしているお母さんたちに「地域の子育て情報」と「居場所」を提供することを目的として、NPO法人(特定非営利活動法人)「こまちぷらす」を設立したのが2012年2月のことです。
「自宅にいては辿り着けない情報がたくさんある」ということを痛感していましたので、必要な情報に対して必要な時に辿り着けるようにしたいという思いから、「地域こそだてカレンダー」という情報事業をスタートしました。
集めてきたチラシの内容は全て、「こまちぷらす」のボランティアスタッフたちがテキスト入力やスキャン作業を行い、それをWEBサイトに掲載し、キーワードで簡単に情報を検索できるようにしています。
この事業によって、子どもが小さくて家から外出できないお母さんでも、「こまちぷらす」のある横浜市戸塚区の子育て情報ならインターネットで簡単に見つけられるようになりました。

子育て中のお母さんの「居場所」となるカフェをつくりたい

こまちぷらす
Q:「こまちカフェ」というカフェも運営されていますが、その目的を教えてください。

森:お母さんたちの「居場所」をつくるために立ち上げたのが「こまちカフェ」です。
「こまちぷらす」を設立する前から、コミュニティスペースのような何かに参加しなければいけない場所ではなく、「『居場所』としてのカフェをつくりたい」と考えていました。というのも、カフェならばコーヒー1杯を飲むためだけでも、その場所にいることができます。積極的に人と関わらなくてもいいわけです。

人であれば自分自身に何らかのレッテルが付いていると思います。
例えば、「母親」「会社員」「障がいのある子どもの親」などです。こうしたカフェならば、そんなレッテルを剥がして、1人の人間として過ごすことができます。
もちろん、積極的に人と関わりたいという人もウェルカムです。そんな「居場所」をつくりたいと考え、「カフェ」をつくりました。

ダイバーシティ社会実現のためには、それぞれが思っていることや感じていること、課題などをまず見ることが大事

Q:つくりたかったのは、地域の子育て情報を提供できる仕組みと、子育てをしているお母さんの「居場所」ということでしょうか。

森:「こまちぷらす」設立から2年ほどは、モデル創業期として、この2つの事業を中心に展開していました。
それからは手掛ける事業も増え、今では6つの事業を柱に展開をしています。「こまちカフェ」の次に手掛けたのは、多様性を目指した学び合い事業です。
この事業では、子どもの不登校や障がいのある子ども、そして同時に介護などとのダブルケアといった課題をテーマとした会合「おしゃべり会」を月に1回開催しています。この事業はとても大事なものだと思っています。

カフェには様々な人たちが集まって様々な話をしていきます。しかし、不登校や障がいのある子ども、そして同時に介護などとのダブルケアのような悩みはなかなか他人には打ち明けられません。
ただ、同じような悩みを抱えている者同士であれば、心を開いて話すことができるようになると思います。同じような経験をしてきた先輩たちとか、今現在、同様の境遇にいる人たちと話をするというのは大事なことです。
自分の悩みを多くの人たちにいきなり打ち明けるのはハードルが高いと思いますので、勉強会と情報交換会を交互に開催しています。

それ以外にも、耳が聞こえる聞こえないに関係なく、ろう・難聴のママたちがひとりの人間として、地域のみんなと「つながりたい」「話したい」「一緒に取り組みたい」という思いを発信している「きこえないママ×まちプロジェクト」もあります。
2014年9月から4年ほど、「こまちぷらす」内のプロジェクトとして活動していましたが、現在は独立して交流会やヨガ教室などの活動をしています。
このように、社会から孤立しがちな様々な背景を持つ人たちが学び合う場をつくり、ダイバーシティ社会の実現を目指しています。

Q: 課題を抱える当事者の「生の声」を聞くことにこだわりをお持ちのようですが、そのためには何が大事でしょうか。

森:それぞれ課題を抱えた当事者が思っていることや感じていることなどを、まず認識することが大事です。
そうした上で、当事者の「生の声」に触れて、個々の課題を地域の抱える「まちの課題」として自分化していく場をつくっています。
解決はできなくても、まずは認識することが大事です。この様々な背景を持つ人を集め、対話をおこなう試みを「フューチャーセッション」と呼んでいます。
子育てしか興味がなかった人でも介護や障がいなど、ほかの課題に触れていく機会が増えるわけです。

子育てに関わる人たちと、まちの担い手になる人たちを増やすために

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Q:それ以外には、どのような事業を手掛けていらっしゃいますか。

森:最近では、「ウェルカムベビープロジェクト」や「つながりデザインプロジェクト」という事業に力を入れています。
「ウェルカムベビープロジェクト」は、クロネコヤマトで知られるヤマト運輸と協業して立ち上げた事業です。
出産祝いのプレゼントをまちの皆さんが提供し、それを出産祝いとしてお母さんに無償で届けるもので、まちの様々な人たちが関わることにより子育てに対する理解が広がる、という効果を狙っています。また、子育てに直接関与しない企業や店舗の人たちにとっても、子育て中の方々のニーズを拾うことができます。

このプロジェクトを通して子育てに関わる人たちの数が増えていくことを目指しています。
実際、子育てへの取り組みに対し、様々な企業も関わるようになっています。例えば、キリングループや花王と「こまちぷらす」が協働で「おむつの自動販売機」を開発し、大阪・伊丹空港や銀座・博品館など、全国6ヵ所に設置されるようになりました。

Q:「つながりデザインプロジェクト」とはどのような事業ですか。

森:カフェでの飲食やイベント(映画の上映会やおしゃべり会など)をきっかけに「こまちカフェ」を訪れた人たちが「互いに関心を持つ」、あるいは「自分の思いを語り合う」、そうした緩やかな入口を起点にしてスタートしました。
「こまちカフェ」でつながりを持ってくれた人たちが、自分のやりたいことを見つけ、やがて「地域の誰かの役に立つ」人と人との循環を生み出す取り組みになるよう、日々実践するといった事業です。「まちの担い手にいつの間にかなっていた」というような流れを、カフェという日常の場において生み出す実践と検証を行っています。このプロジェクトは、2016年4月〜2019年3月まで、日本財団の助成を受けてNPO法人CRファクトリーとの協働で取り組んできました。

後編では、「こまちぷらす」が2017年から取り組んでいるSDGs達成に向けた取り組みや、今後の展望などについてお聞きします。

(プロフィール)

認定NPO法人 こまちぷらす
代表/理事長
森 祐美子
2003年4月にトヨタ自動車に入社、海外営業や海外調査に従事。
孤立しやすい「子育ての環境」を次世代に引き継ぎたくないと思い、同社退職後、2012年2月に6人のママ友たちと「こまちぷらす」を設立、2013年にNPO法人化。その後、認定の認証を取得し、2019年7月6日以降は「認定NPO法人こまちぷらす」に名称変更。現在、約50人のスタッフや約150人のボランティアスタッフ(こまちパートナー)とともに複数の事業(横浜市戸塚区における「こまちカフェ」の運営や、出産祝いを街の皆で届ける「ウェルカムベビープロジェクト」など)を展開。また、地元商店会の副会長、横浜コミュニティカフェネットワーク世話人を務める。

認定NPO法人 こまちぷらす
https://comachiplus.org/

きこえないママ×まちプロジェクト
https://deaf-machiproject.amebaownd.com/ 

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