【前編】超高齢社会を迎え、誰もが認知症を自分事として向き合える場所「Dカフェ」とは? 『認知症を入口に、介護や地域の未来を語らい、支え合う場所 〜NPO法人Dカフェnet〜』

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厚生労働省の新オレンジプラン概要によると、2025年には65歳以上の高齢者の約5人に1人が認知症、あるいは予備群である軽度認知障害(MCI)になるとの推論が示されています。
そのような中、もし認知症になったら、もう既に症状が現れているのではと思うようになったら、どうすれば良いのでしょうか。
また、身近な人が認知症になった時、どのように対応するかという問題もあるでしょう。それらの不安や悩み事の受け皿とも言えるのが、いわゆる認知症カフェですが、全国でも先進的に運営を進められてきた、NPO法人「 Dカフェnet」代表の竹内弘道氏にその中身や活動についてお聞きします。

アルツハイマーの母の介護を通じて感じた違和感をもとに、オープンなカフェスタイルを実践

Q:「Dカフェ(ディーカフェ)」とは、どのようなものでしょうか。

A:まず、日本で2013年より認知症施策として実施された「認知症施策推進5ヵ年計画」、通称「オレンジプラン」の中で、そのモデル事業として認知症カフェという名称が用いられています。
認知症の本人や家族を真ん中にして、様々な人が集まる居場所、というようなコミュニティが行われているオランダやイギリスにある事例がお手本でした。同時にその頃から医療・介護において「自助・共助・公助」ということも言われ始めました。ですから、行政的に言えば、市民が主催する共助の会という位置づけが認知症カフェだったわけです。そこで全国的に推進する動きが始まり、現在では全国に6000ヵ所ほどにもなっているそうです。カフェの名称は、親しみやすく「オレンジカフェ」などが多いのではないでしょうか。

私たちが運営しているDカフェはそうした動きに先んじて始まり、2012年7月には現在のスタイルでスタートしました。私の自宅を開放して設置した「Dカフェ・ラミヨ」です。それを視察した東京都の職員から、認知症カフェの理想的なイメージだということで目黒区に複数広めることを勧められ、当時検討中だった東京都の補助金制度の申し出などをいただき、目黒区と相談して多拠点展開していくことを決めたのです。

Q:全国にある認知症カフェとは、成り立ちから少し異なるのですね。

A:そもそもの始まりは、私が80年代にアルツハイマー型認知症を発症した母を介護してきたことにありました。自宅で見守りを続け、2011年に98歳で看取ることができたのです。その支えとなってくれたのは、「認知症家族会 たけのこ」の存在でした。
今年で21年目になる老舗の団体で、今は私自身が代表も務めています。家族にとって頼りになる、ありがたい存在ではあったのですが、認知症の本人と家族という「当事者だけ」が集まる場でした。もともと家族会というのは、がんなどの病気に対応していくために病院内で行われてきた「患者家族会」が原点です。
それが街に波及していき、市民団体が主体となって行う家族会として発展しています。問題は、認知症家族会においては、本人がいない、介護者だけの会のほうがはるかに多いことでした。つまり、本人の話は誰が聞くのか、ということです。認知症というのは、上手く話ができなくなっていく傾向があります。
ぱっぱと答えられない、言いたいことがあってもスムーズに表現できなくなります。家の中では「ちょっと待ってて」と言われ、病院の医師は介護者と話すことになり、本人の話はゆっくりと傾聴されないことが少なくありません。

「認知症家族会 たけのこ」に参加していて私が感じたのは、このような、本人と介護している家族との関係性の大切さでした。介護者にとっては自分でテキパキやるほうが早いため、全てに手を出してしまいたくなります。ですが、それでは本人は居心地が良くないだろうと思われます。
また、家族会では、そこで話が深まりはするけれども、世の中には広がっていかないということを感じました。家族会で共有されている認知症についての知識や経験談が、一般社会に広がっていかないために、世間では徘徊や壊れていくといったネガティブなイメージが先行してしまいがちです。

そのため、本人・家族だけでなくそれ以外の人も含めた会を、しかも役所的雰囲気ではなく民家や街の中でお茶でも飲みながら行えないかと思ったのです。また、行政主催ですと平日昼間になりがちですが、仕事があっても参加しやすいよう、土・日曜日にも開催したかった。
そうすれば家族の全員が参加しやすく、医療的なアドバイスでも福祉の手続きのことでも日々の対応の仕方でも、その場で聞くことができるでしょう。
主たる介護者だけでなく、ほかのご家族の方も、お子さんを含めて参加できると良いと思うのです。

認知症の本人はあるがままで良い。世話する・される関係から解き放たれて、自由に!

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Q:ご本人が参加することも、大事なのですね。

A:「Dカフェ」では、全員で同じことはしません。3〜4人でテーブルを囲み、ある人たちは家族の悩みについて語り合っていたり、ある人たちは認知症の本人同士だったり、端の方では一対一で難しい相談をしていたり、そういった自由な空間です。
一般の方しばらくおしゃべりをして、「あれ?この人、同じことを何度も言っているな」などと思うことがあります。そこで初めて、話している相手が認知症だと気づいたりするわけです。そのようなことから、認知症の人に対してお世話をしなければなどと、特別視するのでなく、普通に応対していれば良いのだと肌感覚でご理解いただけます。

もちろん、本人にとっても居心地が良く、認知症かそうでないかにかかわらず「Dカフェ」では誰もが話を聞いてもらえます。認知症の人にとっては、私たちが普通に話すスピードでも上手く聞き取れなかったりします。動作や判断、反応が遅くなるので、普段の生活の中で置き去りにされがちなのが、ここでは自然に受け入れられます。「世話されて居る」のではなく、その人のペースで居られるのです。
誰かと話していても良いし、外に行きたくなったら出て行けばいい。仲の良い人がついていきます。介護する家族はそのまま「Dカフェ」で過ごせば良いのです。

デイサービスのようにプログラムが決まっているものではなく、自由に過ごせます。私たちの「Dカフェ」は目黒区を中心に、7年掛けて10ヵ所にまで増やすことができましたが、一般住宅や病院、介護・看護施設などのリラックスした空間で行っています。中には、飲食店を休み時間に利用させてくれている「Dカフェ」もあります。本部である私の自宅「ラミヨ」は月3回、ほかは月1回の開催で、2018年度の開催実績は135回です。1回につき参加人数は25名ほどで、全体では延べ3400人にご参加いただいています。

デモクラシーをベースに、多様性・地域・語り合いの意味が込められた「D」

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Q:改めて、「Dカフェ」とはどういうものと定義できるでしょうか。

A:認知症を入口に、人の誕生から終焉まで、地域の暮らしや共同体の未来を多様な人々で語り合い、支え合う場、としています。
DはDementia(認知症)に加え、Diversity(多様性)・District(地域)・Discuss(話し合い)の意味も兼ね備えています。
つまり、認知症の当事者だけでなく誰もが参加できる「誰でもカフェ」なのです。一般の方はもちろん、障がいをお持ちの方、子育て中のお母さんなどもウェルカムです。目黒以外の地域(区、市)の方もお見えになっています。「Dカフェ」はデイサービスのように決まったプログラムに沿って運営しているのではありません。また単なる「認知症の人の居場所」でもありません。お話をし合う場です。認知症の人はたどたどしくても誰かとおしゃべりして心を開くことができます。介護者は介護経験者や専門職に悩みを語ることができます。その上で、その家族の課題を一緒に解決していこうということです。

「Dカフェ」運営のベースにあるのは、Democracy(自由・対等)という考えです。300円の参加費で運営していますが、全員が(運営者も)等しく300円を払います。これを「300円のデモクラシー」と呼んでいます。ここでは世話をする・されるという上下関係はないのです。

後編では引き続き、課題解決のための具体策や認知症サポートの広報活動についてお聞きしていきます。

(プロフィール)
NPO法人Dカフェまちづくりネットワーク代表
目黒認知症家族会たけのこ代表
竹内 弘道

早稲田大学第一商学部卒業後、メーカーやマーケティング事務所などを経て、40歳で独立。フリーランスのマーケティング・プランニングを生業としつつ、舞台芸術また民俗文化などの活動にも従事。1980年代より20数年間は母親の認知症と並走。2000年春からは24時間介護。2011年、家で98歳の母親を見送る。2012年7月より、自宅を開放し認知症カフェ「Dカフェ・ラミヨ」を開催。2014年NPO法人Dカフェまちづくりネットワーク(略称 Dカフェnet)設立。目黒区内に認知症カフェを多拠点展開する事業に取り組む。2019年4月現在「Dカフェ」は10ヵ所。著書に『認知症の人と家族のための「地元で暮らす」ガイドブックQ&A』(2018年、メディカ出版刊)がある。

NPO法人Dカフェまちづくりネットワーク
http://d-cafe.kazekusa.jp/

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