【後編】「スマート介護士」と「スマート介護プラットフォーム」で介護ロボット・ICT機器を活かす時代へ! 『介護業務を軽減してくれる夢のプラットフォームとは? 〜社会福祉法人善光会 サンタフェ総合研究所〜』

ソーシャル

関連キーワード
介護ロボット
介護業界の人手不足を解消するとして期待されている介護ロボットですが、実際には適切な運用がされていないケースも少なくないといった課題が挙がっています。前編では、介護ロボット運用の専門資格として創設された「スマート介護士」についてお聞きしました。

後編では、引き続き、社会福祉法人善光会 サンタフェ総合研究所所長であり事業戦略室室長の松村昌哉氏に、複数の介護ロボットが運用できる「スマート介護プラットフォーム(SCOP)」のメリットや今後の展望など話をお聞きしています。

介護ロボット活用の課題を解決する「スマート介護プラットフォーム」

介護ロボット
Q:「スマート介護プラットフォーム」を開発した背景をお聞かせください。

A:「スマート介護プラットフォーム(Smart Care Operating Platform、略称SCOP)」を開発した理由は大きく分けて3点あります。

1点目は介護ロボットを活用して質が高く、効率的な介護オペレーションをより多くの施設へ広げるためです。
5年ほど前から介護ロボットやセンサーの導入を進め、試験的に使用したものを含めると100機種ほどの運用をしてきました。その結果、私たちの運営する介護施設では、日本では有数の生産性でオペレーションを実現しています。
しかし、ほかの事業者の施設で介護ロボットを導入しても使われずに倉庫で眠っているケースが多く、そういった経験や経験談がネガティブなイメージとなって介護ロボットを活用した生産性の向上を妨げるネックになっていると感じました。

2点目は介護ロボットなどの多くのIoT機器を同時に使うには、複数のアプリケーションを使いこなすことを必要とすることや、そもそも複数の端末が必要になる場合があることです。AndroidとiPhoneのどちらか一方でしか使えなかったり、アプリがバックグラウンドで起動できず、通知を受け取れなかったりしたため、複数の端末が必要となることに不便さを感じていました。

さらに、一つひとつのアプリの画面遷移の手順が違うため、緊張する場面で介護士がそれぞれのアプリに応じた操作を行わなければならず、誤操作するかもしれないことがストレスになっている点も理由に挙げられます。

介護ロボットの導入が進まない現状とインターフェースや機器の使い分けという課題を解決するために、「SCOP」の開発を進めました。まずは、複数の違うメーカーが作ったIoT機器の操作が1つの端末で可能になるアプリケーションの開発を行っています。このアプリケーションの操作方法を覚えれば、複数の機器を同時に動かせるようになるため、介護ロボットの導入効率が良くなるとともに、バックグラウンド機能にも頭を悩ませずに済みます。

3点目の理由は介護現場で常に課題となっている介護記録の問題です。
介護施設には、利用者の方の状況や介護職員がどのような介助をしたか、介護記録として残しておかなければいけないルールがあります。多くの施設では紙に記録をしていますし、介護記録システムを導入している施設であっても、一度紙に書いたものを後からPCに入力していると思います。介護記録は直接お客様と関わっている時間ではないので、できる限り削減していきたい行程ですが、現状では業務時間の30%は介護記録であるという調査もあります。そこで、IoT機器のコントロールに加えて、タブレッドやスマートフォンを用いて、その場で記録できるシステムを構築することを考えました。

Q:多くの理由から「スマート介護プラットフォーム(SCOP)」の開発に至っているのですね。このほかにも開発の背景となっていることはあるのでしょうか。

A:異なる観点からの理由としては、介護ロボットの導入が進まない背景として、ニーズを掴むのが難しいとされている介護業界では、介護ロボットメーカーが利用現場のニーズに沿ったものをつくれていないという点も挙げられます。

利用現場ニーズを掴みにくい原因としては、利用者の方と介護職員との人間関係の中で、オペレーションの固定性が高いことが要因です。介護の現場では、ベテラン職員のやり方を受け継いでいることが多く、特に意味のない仕事が引き継がれているケースがあります。意味のない仕事が引き継がれてしまう理由のひとつには、介護職員は人の生死にかかわる瞬間的な判断を要する場面に遭遇することもあり、ゆっくりと思考できる時間的な余裕がないことなどから、ロジカルな考え方が浸透しにくいことも含まれるでしょう。本来であれば、利用者の方の状態が変われば、オペレーションも変わるべきなのですが、そのような変化を起こしにくい状況となっているのです。今、そのようにしている業務の理由を、介護職員が言葉で説明できなかったり、施設長ですら理解できていなかったりする場合もあります。言葉にして説明することができなければ、介護ロボットメーカーがヒアリングや調査を行っても真の現場ニーズを把握することは困難です。

そこで、介護記録やIoT機器の使用状況をデータ化しひとつのサーバーに集められれば、利用者の方の状況や介護職員のオペレーション情報など、施設の運営状況の「見える化」が図れます。感覚的な部分に頼っていた介護職員のリーダー層や施設長が運営状況を把握することで、課題が解決できるようになります。あるいは課題が顕在化しているのであれば、IoT機器を提案することが可能です。メーカーに対しては、そのメーカーの機器の運用状況を提供することで開発が進むようになります。

介護の現場にいる職員にとっても、管理職にとっても、そしてメーカーにとっても、「SCOP」は、有益なシステムになるのではないかと考えています。

ユーザーに応じたインタフェースを用意

介護ロボット
Q:「スマート介護プラットフォーム(SCOP)」とはどのようなものなのか、具体的に教えていただけますか。

A:「SCOP」には、複数のインターフェースを設け、ユーザーの欲しい情報をユーザーに合った形で出せるように設計しました。

IoT機器のコントロールを集約できるiPhoneアプリである「SCOP Now」、介護施設のユニットの状況を見たり、介護記録を入力したりするiPadアプリである「SCOP Home」PCのブラウザで見るのは、一般の介護職員用が「SCOP Online」、施設長用が「SCOP Management」です。メーカー向けは「SCOP DB」、入居者の方のご家族向けは「SCOP Family」として展開します。

Q:「スマート介護プラットフォーム(SCOP)」を導入するメリットを教えてください。

A:「SCOP」全体のメリットとしては、各ステークホルダーのコミュニケーションを円滑にするということが挙げられます。

それから、既存の介護システムと比較して、低額で導入できる点も利点です。例えば、「SCOP Now」の月額費用は利用者定員×50円で提供することを考えています。東京都の介護施設の利用者平均は80名ほどですので、月額4000円程度で導入できる計算です。

介護業界の課題解決に向けた取り組みを進めていく

Q:サンタフェ総合研究所の今後の展望についてお聞かせください。

A:サンタフェ総合研究所は、今ある介護業界の課題を解決していくことが設立の目的です。介護業界では、介護の質や生産性の問題、介護の成果が分かりにくいといった問題があります。私たちが事業として展開していくだけではなく、公的な制度として提供していくことを提案していきたいと考えています。例えば、将来的に「スマート介護士」を厚生労働省に公的な資格として運営していただけたらと思っています。

介護の仕事をしていると、成果が見えづらく、モチベーションを維持しにくいことが課題として感じられてきます。「SCOP」で、介護の質も「見える化」できる仕組みをつくり、厚生労働省などにも働き掛けて、施設ごとの介護保険収入の増加にもつながる仕組みもつくれたらと考えています。「SCOP」については、他社も開発を進めることにより、競争を通じてシステムの性能自体が良くなっていくと思いますので、私たちはオープンイノベーターでありたいと考えています。

介護ロボットは、運用する人材の育成と機能的なシステムを導入し、適切に活用することで、生産性の向上による人手不足の解消や、介護の質の向上に貢献することが期待できます。サンタフェ総合研究所の取り組みは、これからの介護を変える大きな動きと言えるのではないでしょうか。

(プロフィール)

社会福祉法人善光会
サンタフェ総合研究所所長
事業戦略室室長
松村 昌哉

2012年社会福祉法人善光会入社。事業戦略室にてマーケティングに基づく経営改善戦略策定及び新規プロジェクトの推進を行う。2013年の介護ロボット研究室設立時より、研究並びに導入から実証までに携わる。2016年「特別養護老人ホームフロース東糀谷」副施設長に就任。2017年「介護老人保健施設アクア東糀谷」施設長に就任。現在、2017年10月に設立された「サンタフェ総合研究所」所長と事業戦略室室長を兼任。

サンタフェ総合研究所について
https://www.zenkoukai.jp/sfri/

スマート介護プラットフォーム「SCOP」について
https://www.zenkoukai.jp/japanese/news/5951

その他のおすすめ記事

その他のソーシャルの記事

キーワード一覧

 ページトップ