幼保無償化は待機児童対策に有効か? 福岡県の自治体が国に先立ち幼稚園・保育園の無償化実施

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2019年10月より、保育園や幼稚園、認定こども園といった幼児教育の無償化(幼保無償化)が実施予定です。子育て世帯にとっては嬉しい政策ですが、注意しなければならないのは、この幼保無償化によって、保育園や幼稚園の利用料が無条件で無償になるわけではないということです。

また、利用する保育園や幼稚園、居住する地域によっても、受けられる補償の内容は変わってきますので、その点は自身でのリサーチが必要となります。

待機児童問題、少子化対策の一環として開始される幼保無償化ですが、実施されることで、果たしてどの程度、待機児童問題や少子化問題の解決につながるのでしょうか。

既に自治体として国に先行する形で幼保無償化に取り組んでいる福岡県大任町(おおとうまち)の状況を参考にしながら、その効果や課題を検証していきます。

幼保無償化とはどのようなものか?

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幼保無償化は、2017年12月に閣議決定された「新しい経済政策パッケージ」にある政策のひとつになります。この「新しい経済政策パッケージ」では、幼稚園や保育園といった幼児教育以外にも、高等教育の無償化、いわゆる大学無償化も政策として掲げられています。
国としては、直近の課題である保育園不足や待機児童問題、そして、経済的な事情により進学を諦めざるを得ない子どもたちのために、広く門戸を開くことで、現在の少子化問題や待機児童問題に歯止めをかけたい考えです。

・幼保無償化で幼稚園や保育園はどう変わるのか?

幼保無償化により、どのように子育て世帯の負担が変わっていくのかを解説します。前提として幼保無償化で全ての幼稚園、保育園が無償になるわけではありません。

まず、保育料金が高いとされる0〜2歳児に関しては「住民税非課税世帯」である世帯年収255万円以下程度の世帯が保育園無償化の対象になり、それ以外の世帯は、今まで通り、金銭的な負担が発生します。

世帯年収にかかわらず、負担減になるのは3歳児からです。3〜5歳児に関しては、幼稚園の場合、補助金の支給を受けることができ、保育園は無償となります。注意したい点としては、認可外の保育園は完全無償化ではなく、幼稚園と同様、補助金での対応となることです。

・幼保無償化で保育園に入園しやすくなるのか? 待機児童問題の解決には

現在の待機児童問題、少子化問題で重要な鍵を握るのが保育園です。厚生労働省が公表した資料によると、2018年10月時点での待機児童の内、9割以上が0?2歳児というデータがあります。
今回の政策では、3歳児からは全面幼保無償化になっていますが、待機児童の9割以上を占める0〜2歳児については所得制限を設けているため、根本的な解決にならない、という声もあります。

補助の対象にならない世帯は、子育てに手の掛かる0〜2歳児を預けるために、高額な保育費用を支払わなければならない、という状況は変わらず、また、対象となる世帯が一斉に預け始めることも予想されます。そのため、保育園入園の競争率はさらに激化し、今まで以上に、2歳児以下の待機児童が増えるという懸念も取り沙汰されています。

このような懸念などを念頭に、2018年2月には「希望するみんなが保育園に入れる社会をめざす会」(現「みらい子育て全国ネットワーク」)により「幼保無償化の前に待機児童解消を」といった政策提言も出されており、幼稚園や保育園が無償化になることで、それがそのまま待機児童問題解決や少子化対策につながるとは言いづらい状況です。

幼保無償化で保育士の負担が増す?

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幼保無償化により、恩恵を受ける世帯があることは間違いありません。また、現在の少子化問題解決への糸口になる可能性を秘めているとも考えられます。しかし、この政策で抜け落ちている問題点はまだあります。それは、さらなる増加が懸念される待機児童問題とは別に、保育士に対する負担増加という問題です。

ただでさえ人手不足と言われる保育の現場に、これまで高額で預けることができなかった世帯の0〜2歳児が、保育園無償化に伴って入園が殺到した場合、現在の保育士の負担はさらに増大すると思われます。

園児が増える一方で、保育士の数が変わらない、足らないとなると、保育の質が落ちていくことも危惧されます。また、保育園によって保育士の待遇に大きな違いがあれば、保育士の異動も頻繁になり、待遇の良い保育園に保育士が集中することにもなるでしょう。そうなった場合、園ごとに質の偏った幼保教育が顕著になる可能性も出てくるかもしれません。

今後の課題として、待機児童の増加抑制に加え、幼保教育を支える現場の保育士たちの環境改善を早急に進めることが重要と言えるでしょう。

福岡県では一足先に幼保無償化を実施した町がある

全国的な幼保無償化は2019年10月からですが、地方では既に、幼保無償化を独自に開始している自治体もあります。

そのひとつが、2019年4月から幼保無償化事業を開始した福岡県大任町です。尚、同じ九州では宮崎県や長崎県の一部地域でも既に実施されています。
福岡県大任町での幼保無償化は、国が進めるものとは違い、町内の0〜5歳児を対象に保育園や幼稚園の利用料を無償化にしています。

先述したように、待機児童で多くを占めるのは0〜2歳児です。そして、最も金銭的に負担が大きいのも0〜2歳児となり、国の実施する幼保無償化で対象となる世帯以外は、根本的な解決策になりづらいというのが実情です。

気になる大任町の幼保無償化のための財源ですが、同町では、好調な収益を上げている道の駅「おおとう桜街道」の収益を幼保無償化の財源に充てることも検討されており、この手法は、他の地方自治体のモデルケースとなり得る可能性があります。

幼保無償化で人口減対策も

大任町では、幼保無償化を人口減対策の一環としても捉えています。同町は元々、産炭地として発展してきましたが、1960年代の人口約8900人から2015年には約5100人へと人口減少の一途を辿っていました。

大任町は今回の幼保無償化により、人口流出に歯止めをかけ、さらには子育て世帯の大任町への移住を促進したい考えもあるようです。実際に同町では、幼保無償化や他の子育て支援の効果などもあってか、2019年4月末日時点で町の人口は5275人となっています。

このような取り組みを、他の地方自治体でも独自に行うことができれば、国の進める幼保無償化と相乗効果を発揮し、待機児童問題や少子化対策、さらに地方が直面している人口減少の対策にも効果が期待できるかもしれません。

子育て支援は国と地方の共同で

少子化問題や待機児童問題は、国にとって非常に重要な問題です。しかし、国の大枠だけでは、細かい部分の問題解決を早急に進めるのは簡単な事ではないでしょう。その不足部分を、今回事例として挙げた大任町のような地方の施策で補うことが今後は大切です。

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