2040年問題を見据えた介護保険制度のあり方とは? 介護施設が大規模化する?

ケア

関連キーワード
2040年問題
介護分野の人材確保が、きわめて困難になると想定される2040年に向けて、厚生労働省は「2040年を展望した社会保障・働き方改革本部」を設置しました。少子高齢化が進む中、医療・介護施設は、どのように変わっていくのでしょうか。同本部の提言について、介護施設の大規模化を中心に解説します。

2040年問題とは

我が国は1970年に「高齢化社会」を迎え、それ以降、諸外国に比べて異例のスピードで「高齢社会」「超高齢社会」に突き進んでいきました。2025年には団塊の世代が75歳になることから、後期高齢者の割合が20%近くにまでに増え、医療費・社会保障費が膨らむことが想定される2025年問題が懸念されています。

同時に出生率が下がっているため、少子化も深刻化しています。介護職の人気の低迷だけでなく、社会全体の労働者人口が減少しているなど、働き手を確保するための課題が山積みです。今後、大量の介護難民が出現することが予測されます。そして、2025年問題はプロセスに過ぎず、その先の2040年には、さらに少子高齢化が進み、社会保障費の捻出が困難になると言われているのが、2040年問題の概略です。

「2040年を展望した社会保障・働き方改革本部」では、そうした時代を迎えるに当たり、健康寿命の延伸や、高齢者雇用の促進、地域共生の包括的な支援体制の確立などとともに、合理的な経営を目的として、医療・介護施設経営の大規模化や協働化、それらの連携などの推進が盛り込まれています。

老人福祉・介護事業の現状

2040年問題
2000年の介護保険法施行以来、介護施設は年々増加する一方で、倒産件数も多いことが指摘されています。東京商工リサーチの調査によると、2018年度の介護サービス事業者の倒産件数は106件(前年比4.5%減)でした。介護報酬の引き上げなどもあり、介護保険法が施行された2000年度以降では7年ぶりに前年を下回ったものの、倒産件数は過去3番目に多く、依然として高い状況が続いています。

全体では負債1億円未満が82件(前年比10.8%減、構成比77.3%)と、全体の7割を超えるなど、小規模事業者の倒産が多くを占めていました。 また、独立行政法人 福祉医療機構経営サポートセンター リサーチグループがデータ分析した「2016年度の特別養護老人ホームの経営状況」によると、定員29 人以下の小規模施設の 41.9%が赤字であると報告されています。施設規模が小さいほど厳しい経営が求められており、それによって倒産にまで至るという実態が浮き彫りになりました。

小規模事業所の経営が困難な理由

2040年問題
2018年度の老人福祉・介護事業の倒産理由は「販売不振」が63件(前年比23.5%増、前年51件)となっています。東京商工リサーチの分析では、「計画性を欠く起業、本業不振のため異業種からの参入など、事前準備や事業計画が甘い小・零細規模の事業者が、思惑通りに業績を上げられず経営に行き詰まるケースが多い」としていますが、一部からは、現行の介護保険の仕組みでは、小規模施設では利益が得られにくいことも倒産の原因であると指摘されています。

介護事業は、介護保険から受ける介護報酬を主たる収入源としています。大まかに言えば、入所定員や一日の利用定員数に応じて職員配置が定められている「基本報酬」と、基準以上の職員配置やサービスを行うことにより上乗せされる「加算」のトータルが収益です。「加算」を請求するためには基準以上の人員を採用するなどの必要がありますが、小規模事業所には、それに充てるだけの資金力がありません。そうした仕組みが、倒産を招く理由のひとつになっていると考えられているのです。

介護事業所の大規模化の推進

厚生労働省は、深刻な少子高齢化時代への対策として、2018年10月に「2040年を展望した社会保障・働き方改革本部」を設置しました。改革本部の方針として、健康寿命の延伸、高齢者雇用の促進のほか、施設を大規模化することで合理的な介護サービスの集約を図り、介護報酬の削減につなげたいという政府の意向を踏まえて、介護事業所の大規模化の推進が盛り込まれています。

介護事業は、社会福祉法人などが担ってきましたが、近年では大手企業の参入が目立つようになりました。施設規模が大きくなることで「福利厚生の充実により、職員採用がしやすくなる」「従業員の働く場所や働き方の選択肢が増える」「スケールメリットを活かした人材採用、育成においてコストを抑えることができる」「備品の購入や施設管理費など、人件費以外のコストカットを行うことができる」など、資本力を活用したメリットが期待できます。

介護事業所の大規模化の弊害

介護事業所の大規模化による合理化は、一部の介護職員の待遇が向上したり、介護報酬の抑制につながるといった「事業所の都合」ばかりが強調され、「利用者にとってプラスである」という声が、あまり聞こえてきません。そもそもサービスの質の優劣は施設の規模で決められるものではなく、それは小規模多機能型居宅介護や共生型サービスなど、地域密着型施設の大半は小規模施設が担っているからです。

大規模施設による合理的な運営が行われるのは、主に人口の多い都市部となりますが、日本の自治体の大多数は過疎地であり、そうした地域が見放されることが懸念されます。また、介護事業所の全体の7割が小規模施設であり、淘汰されることで、これまでサービスを利用していた人が、この先同様のサービスを利用できない状況になることも想定されます。

今後も加速する少子高齢化において社会保障費の抑制は必要ですが、特定の人だけが恩恵を受けるような仕組みでは、本来の役割は果たせません。国に対しては、合理性や施設規模だけにとらわれず「高齢者にとって何が大切か」を十分に検討した上で、地域性やニーズに適した政策を実施することが重要になっていくことでしょう。

株式会社レオパレス21グループが運営する介護施設「あずみ苑」は、地域での生活を希望する方にとって快適なケアを提供しています。
https://www.azumien.jp/

その他のおすすめ記事

その他のケアの記事

キーワード一覧

 ページトップ