ディーセント・ワークとは? SDGs目標8の実現に必要なこと

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ディーセント・ワーク
世界では全体として労働力人口が増える中で雇用が増加せず、経済格差の拡大も見られます。
そうした状況のもと、SDGsの目標8では、「働きがいのある人間らしい仕事」を推進することを目指しています。
その実現のために必要な、ディーセント・ワークについて説明します。

ディーセント・ワークとは

2015年に合意された2030年までの国際目標、SDGs(持続可能な開発目標)を構成する17項目の内の、目標8を実現するために必要なディーセント・ワークについて解説します。

・ディーセント・ワークは1999年に提唱されたもの
ディーセント・ワークとは1999年の第87回ILO総会に提出されたファン・ソマビア事務局長の報告で初めて使われた言葉です。ILOの活動の主目的として位置づけられています。

ILO(国際労働機関)とは1919年に創設された、世界の労働者の労働条件と生活水準の改善を目的とする国連最初の専門機関のことです。本部はスイスのジュネーヴにあり、加盟国は187ヵ国です(2019年3月現在)。

・ディーセント・ワークの内容
ディーセント・ワークとは、「働きがいのある人間らしい仕事」のことです。詳しく述べると、「権利が保障され、十分な収入を生み出し、適切な社会的保護が与えられる生産的な仕事」のことを示しています。

ILOではディーセント・ワークの実現に向けて、次の4つの戦略を掲げています。

(1) 仕事の創出
必要な技能を身につけた上で働き、生計が立てられるように、国や企業が仕事をつくり出すことを支援する

(2) 社会的保護の拡充
安全かつ健康的に働ける職場の確保と、生産性を向上する環境の整備、そして社会保障の充実

(3) 社会対話の推進
職場での問題などを平和的に解決できるように、政府・労働者団体・経営者団体での話し合いを促進

(4) 仕事における権利の保障
不利な立場に置かれて働く人々をなくすため、労働者の権利を保障し尊重する

ディーセント・ワークが求められる理由

ディーセント・ワーク
それでは、そもそも何故ディーセント・ワークが必要なのかを説明します。

・世界の雇用状況
ILOの2019年2月発表の資料によると、2018年の世界の失業率は5.0%、総失業者数は1.72億人とされ、しかもこの状況は今後2年ほど続くと予測されています。
ただ現状のペースでは、SDGsの8番目に掲げられた「ディーセント・ワークをすべての人に」という目標達成はなかなか難しいようです。

・SDGsの目標8とは
SDGsの目標8は、「すべての人のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用およびディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を推進する」をテーマにした12のターゲットからなるものです。

この目標8を達成することで、持続可能な経済成長と生産的雇用・働きがいのある雇用を促進するとされています。そのためには、ディーセント・ワークが原動力になるとしてILOは取り組みを進めています。具体的な目標は、2030年までに世界で6億以上の新たな雇用を創出し、1日2ドル以下で生活する7.8億人の生活を向上させることです。

・ディーセント・ワークが提唱された背景
世界の失業者数が増加する背景として、グローバル競争の激化による労働条件の悪化や所得格差、雇用危機などがあると言われています。さらに男女不平等や障害・年齢などによる差別、あるいは非生産的な仕事への従事といった労働問題などもあり、これらを解決するためにディーセント・ワークが提唱されました。と言うのも、単に雇用を創出するだけでは、世界の労働問題は解決できないと考えられるからです。

・質の高い雇用が必要なわけ
ILOの資料では、例えばアフリカ地域における失業率そのものは4.5%と世界平均より低いものの、安全保障や賃金、社会的保護などにおいて質の低い仕事に就く労働者が多数いるとしています。さらに労働力は年に1400万人以上のペースで増えると予測されています。増え続ける労働力に対し質の高い雇用の創出が求められているのです。

・ILOの取り組み
ILOはSDGsの目標8を達成するために、ディーセント・ワークへの取り組みとして具体的に5つのプログラムを定めています。

(1) 児童労働・強制労働撤廃国際計画(子どもの労働をなくす)
世界全体で1.52億人の子どもたちが働き、4000万人が奴隷のような環境にあると推定され (2016年時点)、そうした状況から2025年までに全ての児童労働、そして2030年までにあらゆる形の強制労働の撲滅を目指すとするもの

(2) 労働安全衛生・グローバル予防行動計画(安全で安心な労働を)
世界では毎年278万人が仕事に関わる事故や疾病で命を落としているとされており、全ての労働者が安全で健康的に働くという基本的な権利を享受できるように手助けするというもの

(3) 平和と強靭性のための雇用促進計画(よい労働は平和を生み出す)
紛争で被害を受けた国や災害の多い国を対象にした雇用促進プログラムで、特に若者が働く機会を獲得し、より良い未来への基盤を構築していこうというもの

(4) 社会的保護の土台計画(すべての人にセーフティネットを)
全ての人に社会的保護の土台が与えられることを目標として、社会的保護制度の策定や実施を促進・支援していこうというもの

(5) より良い仕事計画(働く人も売る人も買う人も幸せに)
ILOと世界銀行グループの国際金融公社(IFC)の共同事業であるベターワーク計画を通じた、衣料産業における労働条件の改善と企業競争力の強化への取り組み

日本におけるディーセント・ワークへの取り組み

ディーセント・ワーク
日本では2012年7月における閣議決定「日本再生戦略」の中で、ディーセント・ワークの実現が盛り込まれています。

・官民の取り組み
2007年12月18日に開かれた関係閣僚や経済界・労働界、地方公共団体の代表などからなる「官民トップ会議」において、「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」「仕事と生活の調和推進のための行動指針」が策定されました。その中には、ディーセント ・ワークへの取り組みに関する記述があり、次のように述べられています。

・仕事と生活の調和に向けた取り組みを通じてディーセント ・ワークを実現し、職業能力開発や人材育成、公正な処遇の確保など雇用の質の向上につなげることが求められている

・ディーセント ・ワークの推進は就業の促進と自立支援につながる

・労働者の健康確保と安心して働ける職場環境の実現には、長時間労働の抑制、年次有給休暇の取得促進、メンタルヘルス対策などへの取り組みが重要

・ディーセント・ワーク実現への課題
政府は「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)」に向けた取り組みを通じてディーセント・ワークを実現する、としています。ではそのワーク・ライフ・バランスの実現に向けてどのような課題を認識して取り組みを行っているのかを見てみましょう。

内閣府発表による「仕事と生活の調和レポート2018」では、ディーセント・ワークの実現につながるワーク・ライフ・バランスへの取り組みがどの程度進捗しているのかについて記載されています。その中で、進捗していないものとして次の項目を挙げています。

(1) 時間当たり労働生産性の伸び率
(フレックスタイム制活用促進・年次有給休暇の取得促進など)

(2) 自己啓発を行っている労働者の割合(正社員・非正規社員)
(産学協働による教育フ?ロク?ラムの開発・実証による学ひ?直しの推進など)

また、進捗してはいるものの、順調ではないものとして次の項目を挙げています。
(カッコ内は具体的な取り組み)

(1)  労働時間などの課題についての労使の話し合いの機会の割合
(2)  週労働時間60時間以上の雇用者の割合
(労働基準法、労働安全衛生法、労働時間等設定改善法の改正)
(3)  メンタルヘルスケアの措置を受けられる職場の割合
(過労死等防止対策の推進)
(4)  短時間勤務を選択できる事務所の割合
(多様で柔軟な働き方を可能とする環境整備の促進)
(5) 男性の育児休暇取得率
(男性の仕事と子育ての両立に関する意識改革)
(6)  6歳未満の子どもを持つ夫の育児・家事の時間

つまり、これらの課題への取り組みが、日本でのディーセント・ワーク実現につながると言えます。日本では、働き方改革を通して、これらの課題解決に取り組んでいます。

まとめ

持続可能な開発のために必要な目標8を実現するためには、「働きがいのある仕事」を創出する必要があります。そのためにはディーセント・ワークの実現が不可欠です。

例えばレオパレス21では、2014年にワーク・ライフ・バランス推進室(現ダイバーシティ推進室)を設置するなど、働き方改革への取り組みを行い、時間外労働時間の減少や有給休暇の取得率改善などの成果を生み出しています。このような取り組みがこれからも必要とされています。

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