働き方改革の新たな手法「分断勤務」とは?家庭と仕事を両立し人材獲得や離職防止の効果も期待
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家庭と仕事を両立する働き方もこうした取り組みのひとつで、代表的なものとして在宅勤務が知られています。
今回は、「分断勤務制度」という新しい勤務制度について、概要やメリット、懸念される点などを解説していきます。
「分断勤務制度」とは

従来の勤務形態は、午前中に会社に出勤し、昼休憩を挟みながら夕方まで連続して仕事をするというスタイルが基本でした。これに対して「分断勤務制度」では、一日あたりの所定勤務時間を満たせば仕事を中断することができます。例えば、一日8時間勤務の人が午前中出社して3時間勤務し、午後は私用のため仕事を中断し、その後帰宅し在宅で5時間勤務するなどの勤務形態が可能となります。
「分断勤務制度」は、在宅勤務やテレワークなどの勤務方法を取り入れつつ、労働者が勤務時間をどのように配分するか裁量できる制度ということができます。例えば育児や介護などの家庭事情を抱える労働者にとって、働きやすい環境を整えられる制度だといえるでしょう。
「分断勤務制度」は、まだまだ始まったばかりの取り組みですが、すでに取り入れている企業もみられます。例えば大手通信系企業では、グループ会社を含め8割を超える従業員を対象に「分断勤務制度」を導入する動きがありました。
夜間における海外拠点との対応など、通常の勤務時間を越えて対応が必要な業務で「分断勤務制度」を実施することによって、日中から夜間にかけての待機勤務が不要となります。
空いた時間を私用に充てることで仕事の効率が高まり、プライベートの充実も図ることができるとされています。
「分断勤務制度」のメリットと課題

また、先ほど挙げた大手通信系企業の事例でもみられるように、夜間業務のための待機勤務を減らすことができれば、残業手当などの削減にもつながるでしょう。さらに、育児や介護などの家庭事情を理由として離職する人に対して、そうした家庭事情と仕事とを両立しうる勤務形態として「分断勤務制度」を提案することができれば、離職を防げるかもしれません。これにより、優秀な人材の継続的な確保につながることも期待できます。
一方で、「分断勤務制度」には課題もみられます。例えば、就業時刻を定めておかないと、深夜まで就業が及ぶなどし、結果的に労働者の健康を害する事態を招く恐れがあります。このため企業側は、労働者が十分な休息時間を確保するよう配慮することが求められます。
また、勤務時間の分断回数の上限を決めておくことも大切です。際限なく勤務時間を分断していては、労務管理の手間とコストがかかることになり、企業にとっては損失となる場合も出てきます。さらに、分断勤務によって社外で勤務する場合には、企業の重要な情報が漏えいしないよう万全の対策を講じることも必要です。そのため、情報セキュリティに関する研修の徹底やセキュリティ対策の確認などが不可欠ととなってきます。
多様な働き方が認められる社会へ
この制度をきっかけに勤務形態や業務内容の見直し、改善が行われれば、生産性の向上やコスト削減などにつながる契機となる可能性もあり、企業側にとってもメリットは大きいのではないでしょうか。
一方、労働者にとっても、個々人のライフステージに合わせて働き方を選択できるようになれば、安心して仕事を続けることができ、また就業への意欲も高まると考えられます。「自分らしい働き方を選択でき、これによって企業が多様で創造的に発展する」─そんな社会づくりが今後も進むことが期待されます。
レオパレス21でも、2014年にワークライフバランス推進室(現ダイバーシティ推進室)を設置し、働きやすい職場環境の整備を進めています。
例えば、在宅勤務を原則月8回まで実施するなどのテレワークの拡大や、従業員の健康管理指標として勤務間インターバルを確保するといった取り組みを行っています。
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