【前編】「介護×IT」で少子高齢化時代の介護を切り開く!介護業界のIT導入の課題への挑戦『「介護ITエンジニア」の必要性とは〜株式会社ビーブリッド〜』

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株式会社ビーブリッド
少子高齢化が進む中、介護業界では人手不足が深刻化しています。
ITの導入による業務効率化が様々な分野で進められていますが、介護業界ではIT導入に課題があるとされています。10年ほど前から「介護×IT」の分野で事業を展開している、株式会社ビーブリッド 代表取締役の竹下康平氏に、介護業界へのIT導入の必要性や課題などについて伺いました。

「介護とITを同時に考える」をテーマに会社を設立

Q:まず、ビーブリッドという会社について教えてください。

A:当社は「介護とITを同時に考える」をコンセプトにつくった会社です。
介護とITはそれぞれ専門性が必要な領域です。しかし、今、介護の仕事をするうえで、IT活用が少しずつ求められ、また、介護に役立つITも求められています。とはいえ、介護の専門家がITについて詳しいということは多くなく、また同様にITの専門家が介護について詳しいということもまずありません。そこで、「介護とITを同時に考える」ためにつくったのがビーブリッドという会社です。

当社は主たる事業として創業から10年、サポート契約を結んだ介護事業者に対する、ITのヘルプデスクサービス「ほむさぽ」を提供してきました。最近ではそのノウハウを活かし、介護事業者がITシステムを導入する際のコンサルティングサービスも行っています。

迫りくる需要の増大、介護職員の負担増を抑制するにはITの導入が不可欠

株式会社ビーブリッド
Q:介護業界にITを導入することが必要だと考える理由について教えてください。

A:介護業界は深刻な人手不足のため、働いている人の負担を少しでも減らすには、IT活用は重要であると考えています。
少子化によって若者が減少していることで、生産年齢人口の働き手が減っているのに対し、介護業界の人材需要は増加しています。
また、全産業を平均した有効求人倍率は1.6倍程度ですが、介護分野の有効求人倍率は全国平均で約4.5倍です。東京都23区に至っては10倍を超えていて、最新のデータだと12倍を超えるともいわれています。求職者1人に対して12もの求人があるわけですから、新規採用の難しさがうかがえると思います。

また、日本の65歳以上の高齢者人口は3割程度ですが、2060年には4割を超えると予想されています。
しかし、地方では既に高齢化がさらに進んでいて、たとえば、先日講演のために足を運んだ石川県の場合、能登半島の中部や北部では高齢者人口が4割に達しています。
私の出身地である青森県でも、40ある自治体のうち、およそ4割の自治体で高齢者が4割を超えています。65歳だとまだ多くの人が介護を必要としないかもしれませんが、2025年には75歳以上の後期高齢者が18%を超えるとされています。
地方では主要都市を除くと、既に後期高齢者が概ね3割を占めるという時代に突入してしまっているのです。

しかし、介護の分野では人手不足でも食事介助の回数を減らす、夜間の巡回の頻度を減らすということができません。
サービスの質を落とさずに、生産性を向上させなければならないため、省力化がキーワードとなるのです。
とはいえ、何でもITで解決できるものではなく、コストも踏まえたうえでのIT導入でできる業務効率化は限られています。
しかし、ITを駆使すれば、今まで30人でやっていたことを28、9人でできるなど、数%でも状況を改善できると考えています。

介護業務の知識を持つ「介護ITエンジニア」が必要

株式会社ビーブリッド
Q:介護業界へのIT導入には何が課題となっていると考えられますか。

A:介護は専門的な知識が必要な仕事なので、IT業界が介護業界向けのシステムやソフトを展開するには介護に関する知識が必要です。
しかし、IT業界で介護に関する知識を持っている人はわずかです。数年前、100人ほどのエンジニアを対象に講演を行ったところ、介護に関する知識が少しでもある人はわずか3人で、そのうち2人は50代で家族の介護の経験がある人でした。
残りの1人はライフワークとして介護に関する勉強をしていた人でしたので、100分の1という割合です。一般の人でも介護の仕事に就いている人や、身内の介護をしていた人を除くと、介護の知識を持った人はほとんどいないと思います。

また、弊社では調査事業の取りまとめなどを請け負うこともありますが、介護に従事しているスタッフの大半はITに苦手意識を持っていたり、嫌悪感を持っていたりするという調査結果があります。
双方を踏まえ考えてみると、介護業界とIT業界では知識や経験、環境が重なっておらず、そもそも関係性が低いことが問題として挙げられます。

Q:介護とIT、双方の知識を持つ人材がいないことで、どのような問題が引き起こされているのでしょうか。

A:介護とITの双方の知識があれば、介護にITを導入することの必要性や、どういった業務にITを導入すると業務効率化の効果が高いかわかるはずです。
たとえば、私はメーカーのエンジニアをやっていた時、実際に現場である製造ラインを見学して、どのように製品が製造されているかといった業務知識から身につけていました。自社の課題を解決するITシステムをつくるには業務を理解することが必要なためです。
介護業界にも他産業と同様に、介護業務を理解したうえで、ITによって業務効率化を図れる課題を抽出し、対応できる業務SE、「介護ITエンジニア」が必要です。

ITエンジニアは製造や金融、出版、ゲームなど様々な業界にいて、企業が求めるスキルがあれば、業界をわたって転職することも少なくありません。
しかし、介護業界にITエンジニアが転職するケースは現場の介護職員になる場合を除くと、大手の限られた企業以外ではほとんど見られません。
そのため、介護業界にはIT業界との人材交流がなく、現状では「介護ITエンジニア」が育ちにくい環境があります。

そこで、人材交流が起こらない状況を打破するためにも、介護業界について知る仕組みを外でつくる必要があると考えています。
実際に仙台市などの自治体ではITエンジニアと介護職員が一堂に集まり、ディスカッションを行って知識を高め合うためのカフェが実施されています。

後編では引き続き、「ほむさぽ」のサービスの内容や反響、今後の課題などについて伺います。

<プロフィール>
株式会社ビーブリッド
代表取締役
竹下康平氏

プログラマー、SE等を経て、2007年介護事業等を行う企業のIT戦略立案等に関与。その後、2010年に株式会社ビーブリッドを創業。創業直後より介護事業者向け総合サービス『ほむさぽ』を中心に、介護業界のIT利活用と普及のためのサポート・相談事業を関東、福岡、宮城で展開中。現在、日本福祉教育専門学校、北九州市立大学非常勤講師、株式会社ウェルモ等、介護ITメーカー数社の顧問を兼任。

株式会社ビーブリッド
https://www.bibrid.co.jp

ほむさぽ
https://homesapo.com

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